バリ島 彫り始めはチェーンソーで
ウブドの陶器工房にいた時、なにやら表が騒がしい。ん~~とエンジンが唸る音が響いてきた。 表に出てみると、向かいの工場でチェーンソーを使い、木と格闘している男がいた。 輪切りにされた大木が土の上にデンと置かれ、裸足の男が、小柄な体格にもかかわらず、重そうなチェーンソーを駆使して、木に刻みを入れている。 何も下書きされていない木がチェーンソーによって削り取られ、大まかな形を現してきた。頭の中に既に完成された形どおりに切り進めているのか、いい加減にやっているように見えても、計算されつくされているのだろう。 大まかな彫をチェーンソーでしつらえて、その後はノミに持ち替えて、もっと細部まで彫ってゆくのだろう。 職人が大勢住んでいるウブド地域。勘と経験にものを言わせる彼らが、世界に誇るバリのハンディクラフトを支えている。 形から入る、総てが整ってから始める現代社会の日本人と違って、何も足さない、何も引かない、無の状態からの仕事が始まっている。仕事は格好でするんじゃないよって言う彼らのメッセージが聴こえるようだ。そんな気構えを素足が物語っている。