図書館で『腐敗と格差の中国史』という新書を、手にしたのです。
危険な隣国・中国の歴史的メカニズムを探究することは、個人的には喫緊のテーマになっているのです。
ブログアップが1、2で逆になったが・・・まあいいか。
【腐敗と格差の中国史】
岡本隆司著、NHK出版、2019年刊
<「BOOK」データベース>より
なぜ中国では党幹部や政府役人の汚職がやまないのか?なぜ共産主義国にもかかわらず、貧富の差が拡大するのか?超大国を蝕み続ける「病理」の淵源に、実力派歴史家が迫る。エリート/非エリートの金・コネ・権力をめぐる相剋の二千年を一望し、独裁の度合いを強める中国共産党、および現代中国の実相を大胆かつ明快に読み解いた一冊。
<読む前の大使寸評>
危険な隣国・中国の歴史的メカニズムを探究することは、個人的には喫緊のテーマになっているのです。
amazon腐敗と格差の中国史
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「はじめに」から、見てみましょう。
p3~10
<はじめに・・・中国共産党から考える>
■共産党とは何か
いま「社会主義」といっても、死語に近い。物心ついたとき、そうした思想・言論がまだまだ優勢で、権威をもっていた。そんな記憶がある筆者からすると、「社会主義」の現状は、うたた今昔の感がある。多くの若い人は、おそらく実感はもてまい。「社会主義」といわれて、それがかつて有した権威のほどを感知するのは、もはや不可能だろう。ともかく知識として、理解するに努めるほかあるまい。
それでも、社会主義がまったく消滅したわけではない。それを信奉する個人・集団・国家は、なお厳存する。そうした存在じたい、確かに人類のこれまで歩んできた歴史に大きな痕跡を残してきたことを物語っていよう。
社会主義という概念は、二つの段階に分けて考えると、わかりやすいだろうか。まず、社会の構成に対する認識。対立する上下の階級に分かれ、生産する下層階級を生産に従事しない上層階級が搾取するのを社会のしくみだと措定する。ここまでは、学問思想の範疇だといってよい。
(中略)
そのよすがになるのが、共産党という組織である。下層の労働者階級を社会的基盤とし、その利益を代表する「前衛」として活動する政党であり、社会主義革命を通じた共産主義社会の実現を究極の目標として掲げた。
ひとまずのことばの定義は、そうである。そして共産党と名乗る以上、本来そうした社会主義革命と共産主義社会を実現するための政党でなくてはならない。
■共産党と中国
その共産党は世界に決して少なくないし、日本にだってある。けれども政権に就いているものは、数えるほどしかない。そのうち最も巨大で、日本人の運命とも関わりの深いのが、やはり中国共産党であろう。
中国共産党は1921年、上海で誕生した。日本共産党と同様に、コミンテルンの支部としてである。しかしいきさつまで、日本と同じであったはずはない。
そもそも当時のエリートが考えていた課題は、何よりも「救亡」にある。中国は20世紀のはじめから危機の時代であった。帝国主義列強の中国分割が現実味を帯びた時期もある。それが実際にずっと続いたわけではなくとも、知識人エリートの恐怖心・危機感は、一貫して強かった。あるいはいまも、それは継続している。亡国を救い、強国となる。その方途を求めるのが、当時の思潮の主流をなした。
(中略)
日本が明治維新を断行し、西洋風の立憲君主制を採用したのも、富国強兵のためであって、そうしなければ、列強に植民地化される、との恐怖心からである。あらかじめ議会制を十二分に理解して、そのものに価値を見出したから、ではない。
そうはいっても、社会主義はといえば、20世紀に入って、なかんずく資本主義が行き詰まり露呈した戦間期から、世界のインテリの間で、比類なき権威を保った。これまた、日本も例外ではない。
(中略)
■歴史からさぐってみる
そんな目前の現代中国をどう見ればよいのか。「救亡」と「腐敗」との関係は、どのように理解すればよいのか。問題をもう少ししぼって、それほどに共産党政権が目の敵にする「腐敗」は、どのようにして生まれるのか、と問うことも可能だろうか。隣接するわれわれにとっても、大きな謎である。
腐敗といっても、もとの腐るモノがなくてはありえない。それならそのモノは、いつできたのか、またどのように腐っていったのか。それをさぐることが、社会主義が退潮した後も実験を握りつづける中国共産党政権、ひいては現代中国の実相の解明に役立つのではないか。
中国はおそらく、世界で最古の官僚制を有する国家の一つである。同じ時代ならローマ帝国が、同じ型の国家を作り上げた。ところがローマ帝国の解体滅亡とともに、その官僚制も最終的に崩潰する。少なくとも西欧では、一から作り直しになった。中国ではそれに対し、紆余曲折はありながらも、ひとまず一貫した連続性を有する。少なくとも当事者たちの主観は、そうにちがいない。
つまり歴史がすこぶる古いわけで、弊害もしたがって、いよいよ根深く筋金入りである。重視すべき目前の「腐敗」も、おそらくそこからもたらされたもので、その由来と推移を明らかにするには、過去の事例およびその経過をつぶさに跡づけてゆくしかない。そっこが本書の主たるねらいとなる。
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たいへん長い「はじめに」なので、以降省略します。
それにしても、 中国共産党政権に対する著者の覚めた(冷めた)眼差しがええでぇ♪
『腐敗と格差の中国史』2