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2014年11月14日
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カテゴリ:国内「な」の著者

中学教師苦沙弥先生の書斎に集まる明治の俗物紳士達の語る珍談・奇譚、小事件の数かずを、先生の家に迷いこんで飼われている猫の眼から風刺的に描いた、漱石最初の長編小説。江戸落語の笑いの文体と、英国の男性社交界の皮肉な雰囲気と、漱石の英文学の教養とが渾然一体となり、作者の饒舌の才能が遺憾なく発揮された、痛烈・愉快な文明批評の古典的快作である。(文庫内容紹介より)

■夏目漱石『吾輩は猫である』(新潮文庫)
なつ夏目漱石:吾輩は猫である1.jpg

◎落語好きの英語教師

 夏目漱石の作品を、一言で形容することは難しいと思います。スピード感に満ちた展開、歯切れのよい会話、風刺・諧謔の連発、しゃれた逸話……。『吾輩は猫である』(新潮文庫)には、落語好きな英文学者の英知が凝縮されています。

 ほとんどの人は、『吾輩は猫である』の存在は知っています。ただし作品の生い立ちやストーリーを語るとなると、難渋することでしょう。まずは日本を代表する、偉大な作家の誕生ものがたりを確認しておきます。

――高浜虚子は、当時無名の39歳の新人・夏目漱石に『吾輩は猫である』を書かせている。妻との不和や監視妄想を伴う神経衰弱から、気分転換させるためだった。高浜虚子は、『吾輩は猫である』の初稿をボツにしている。つまり、世に出ているのは改稿された『吾輩は猫である』というわけだ。ボツになった原稿は、まだ発見されていない。(坪内祐三『近代日本文学の誕生』PHP新書より)

 高浜虚子は、正岡子規の弟子にあたります。正岡子規と夏目漱石とは高等学校から大学までの同級生で、2人が親密になったきっかけは、ともに熱狂的な落語ファンであったことにあります。漱石に写生文で書くように勧めたのは、子規であるといわれています。このように夏目漱石は、子規・虚子という子弟コンビに支えられて誕生しました。

◎『吾輩は猫である』を簡単に説明せよ

『吾輩は猫である』の再々読(おそらく3度目)を電子書籍(青空文庫)でおこないました。電子書籍は活字の大きさを自由に変えられますし、暗いところでも読むことができます。「青空文庫」は無料でダウンロードが可能なので、重宝させてもらっています。ただし著作権の問題で、近代文学は没後100年を経なければ「青空文庫」にとりこまれません。

 何度読んでも夏目漱石の作品は、歯切れがよくて気持ちを覚醒させてくれます。『吾輩は猫である』のストーリーを紹介するのは難しいので、いくつかの短いガイドを並べてみたいと思います。
 
【「新潮文庫」カバーのコピー】
――中学教師苦沙弥先生の書斎に集まる明治の俗物紳士たちの語る珍談・奇譚、小事件の数かずを、先生の家に迷い込んで飼われている猫の眼から風刺的に描いた、漱石最初の長編小説。江戸落語の笑いの文体と、英国の男性社交界の皮肉な雰囲気と、漱石の英文学の教養とが、渾然一体となり、作者の饒舌の才能が遺憾なく発揮された、痛烈・愉快な文明批評の古典的快作である。(本文より)

【『新潮日本文学小辞典』】
――中学教師苦沙弥先生の書斎に集まる迷亭、寒月ら明治の教養ある紳士たちの議論を、飼い猫の眼から風刺的に描いた作品。文体は江戸落語を、会話の雰囲気は十八世紀英国の男性社交クラブのそれを、ペダントリーは作者の英文学の教養をそれぞれうかがわせ、漱石の饒舌の才と文明批評を遺憾なく発揮している。(本文より)

【『解体全書』(リクルート)】
――大評判をとった処女作。語り手は、中学の英語教師・珍野苦沙弥に餓死寸前のところを救われた「吾輩」こと猫。その猫の目を通して、苦沙弥先生の一家5人とそこに集まる変人たちの日常や騒動が饒舌に活写されている。苦沙弥先生が作者自身の痛烈なパロディであることはいうまでもない。言葉遊びを多用した文体がユーモアと笑いの効果を高めている。自分も取り込まれている時代の文明すべてを槍玉にあげた日本風刺文学の傑作。(本文より)

【明快案内シリーズ「明治の名著2」(自由国民社)】
――中学教師に引き取られた一匹の飼い猫の眼に映じた明治の教養ある紳士たちの言動や時代の風潮を鋭い風刺と批判で描いた小説。当時、俳壇には名前が知られていたが作家としてはまだ無名であった漱石を、一躍流行人気作家にした第一の作品。(本文より)

【3行でわかる名作&ヒット本250(宝島文庫)】
1.中学の英語教師・珍野苦沙弥の家猫は人間たちを哂(わら)う
2.夏目漱石の「処女小説」で、初出は雑誌「ホトトギス」
3.「吾輩は猫である。名前はまだ無い」の書き出しで有名。

 いかがでしょうか。私は基本的に「あらすじ本」は、読んではいけないと思っています。読書後の確認作業のひとつならいいのかもしれませんが、「あらすじ」だけで読んだつもりになってはいけません。

 さしたるストーリーのない『吾輩は猫である』を、プロは前記のようにまとめて紹介しているのです。

 あらすじが書けないほどの長編を、デビュー作でやってのける。夏目漱石は天才です。博学であり、肝がすわっています。断言できますが、新人にこんな「遊び」はできません。『吾輩は猫である』は1回かぎりのつもりで雑誌「ホトトギス」に書いたのですが、高浜虚子の勧めもあって連載となりました。

 その後夏目漱石は、朝日新聞の嘱託作家となります。教職を捨てた漱石は、破格の条件で迎えられました。夏目漱石の文体がわかりやすいのは、新聞の読者を意識してのものであるからでしょう。

『吾輩は猫である』をパロディ化した作品は、数多くあります。そのなかでは、奥泉光『吾輩は猫である殺人事件』(新潮文庫)がもっとも優れています。夏目漱石『吾輩は猫である』の終わりが書き出しになっています。冒頭を紹介しましょう。
 

――吾輩は猫である。名前はまだ無い。吾輩はいま上海に居る。征露戦役の二年目にあたる晩秋の或る暮れ方、麦酒(ビール)の酔ひに足を捉られて水(みず)甕(かめ)の底に溺死すると云ふ、天性の茶人的猫たるにふさはしい仕方であの世へと旅立った筈の吾輩が、故国を遠く離るること数百里、千尋の蒼海を隔てたユウラシアの一劃になぜ斬くあらねばならぬのか。読者諸賢の不審は至極尤もである。(本文より)

 この作品は猫が上海で、苦沙弥先生殺害を知るところからはじまります。犯人は、迷亭、寒月、東風、独仙のなかのだれなのか。ホームズやワトソンという名前の猫まで、動員しての長編小説です。面白さについては太鼓判をおしますので、『吾猫』ファンならぜひ読んでいただきたいと思います。文体も夏目漱石を模しており、楽しく読むことができます。ちなみに『吾猫』の模倣作は50ほど存在するようです。間違っても、「吾輩は淋菌である」などは読まないように。

(山本藤光:2012.10.09初稿、2014.08.04改稿) 






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最終更新日  2018年02月02日 08時48分37秒
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