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山本藤光の文庫で読む500+α

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2015年11月13日
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カテゴリ:国内「な」の著者
自分とセックスしている夢を見て、目が覚めた―。女から女へと渡り歩く淫蕩なレズビアンにして、芝居に全生命を賭ける演出家・王寺ミチル。彼女が主宰する小劇団は熱狂的なファンに支えられていた。だが、信頼していた仲間の裏切りがミチルからすべてを奪っていく。そして、最後の公演の幕が上がった…。スキャンダラスで切ない青春恋愛小説の傑作。俊英の幻のデビュー作、ついに文庫化。(「BOOK」データベースより)

中山可穂『猫背の王子』(集英社文庫)
なか中山可穂・猫背の王子.jpg

◎中山可穂ができるまで

 可能性をひめているのに、なかなか花開かない作家はたくさんいます。若いころPHPメルマガ「ブックチェイス」の文芸時評を担当していたとき、若手作家のデビュー作を積極的に紹介していました。

 中山可穂『猫背の王子』(集英社文庫)もそのなかの1冊でした。発売になったのでさっそく読んでみて、異色のテーマを書きこなす才能に驚きました。プロフィールを調べてみました。

 女性作家には珍しく、生年月日が明らかにされていました。1960年生まれ。早大卒業後に、小劇団を立ち上げます。その後芝居を止めて、空白の5年間を過ごすことになります。その間、ヨーロッパを旅行します。帰国後に会社勤めをしながら、旅行記をまとめます。それを知りあいに見せたところ、「あなたは小説を書くべきだ」と薦められます。

 デビュー作『猫背の王子』は、そんな展開で33歳のときにマガジンハウスから出版されました。しかしほとんど、話題になることはありませんでした。その後中山可穂は、『天使の骨』(集英社文庫、初出1995年)を書いて、朝日新人文学賞に応募します。ところが受賞後の作品を世に出せません。

 書けなかったのではなく、書くたびに編集者からダメ出しされつづけたのです。そして3年後にようやく出したのが、『サグラダ・ファミリア・聖家族』(集英社文庫)だったのです。本書は野間文芸新人賞候補になりましたが、大きな話題にはなりませんでした。

 中山可穂はデビュー作以降も、女性の同性愛を描きつづけました。自らをレスビアンであると公言してはばからない、中山可穂は執拗に同じ世界を描きました。

 そして2000年『感情教育』(講談社文庫)を発表します。この作品も野間文芸新人賞候補作となります。このあたりから、出版社からの原稿依頼がきはじめます。

◎デビュー作がいちばん

 中山可穂が実力を発揮したのは第7作『白い薔薇の淵まで』(集英社文庫、初出2001年)からです。この作品は山本周五郎賞に輝きました。この作品は朝日新人文学賞の受賞後の作品として書かれたものです。当時の編集者からダメ出しされたものだったのです。

 しかし私はどの作品もまだ、デビュー作『猫背の王子』を超えていないと思っています。そこで「山本藤光の文庫で読む500+α」の『現代日本文学125+α」の末席ですが、本書を用意することにしました。

『猫背の王子』の主人公・ミチルは、小劇団の主宰者です。著者自身も、20代半ばまでは劇団を主宰していました。ミチルは少し猫背で、痩せていて、少年のような体をしています。

 自らも男役として、舞台にも立ちます。ミチルの舞台にかける情熱は、すさまじいものがあります。舞台のためには、なりふりかまいません。私生活のすべてが、舞台への延長線上にあります。

 主演女優が引き抜きにあいます。連れ戻しに行きますが、願いはかなえられません。急きょ、代役をあてがうことになります。舞台に穴はあけられません。このてんまつは、実体験者にしか書けないものです。観客の目線での思考。この思考法が、作品に迫力を産み出しています。

 中山作品は、単なるレズビアン小説ではありません。巧みな人物造形とテンポのよいストーリー展開は、職人芸を思わせます。

 私はデビュー作を大きく超える作品の、完成を待ちつづけています。中山可穂はきっと、新たな世界を見せてくれると信じてもいます。別に今の世界が、嫌いなわけではありません。おそらく男女の恋愛は描けないでしょうが、男を主人公に据えることはできるはずです。期待して待つことにします。ただし紹介できる現代日本文学の席は、125しか用意していません。新たな新人が登場する前に、読ませていただきたいと願います。
(山本藤光:2001.06.24初稿、2015.11.12改稿)





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最終更新日  2017年10月11日 09時01分37秒
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