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2017年07月04日
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干刈あがた・訳『堤中納言物語』(講談社「21世紀少年少女古典文学館7)
ひか干刈あがた・堤中納言物語.jpg

『堤中納言物語』には、いまに通じる個性的な人間像が、あふれる機知とユーモアで描かれている。『うつほ物語』は、全20巻という日本最古の長編物語であり、その成立、内容ともに謎をひめた新発見の魅力にみちている。天上の琴を守り伝える芸術一座四代の数奇な物語の背景に、恋のさやあてや貴族の祝祭などの王朝ロマンが,絢爛豪華にくりひろげられる。(「BOOK」データベースより)

◎干刈あがた訳を推薦

 私の大好きな全集『21世紀版・少年少女古典文学館』(全25巻、講談社)のなかから、1冊を紹介させていただきます。全集のタイトルは少年少女向けになっていますが、大人でも十分に満足できる現代語訳ものです。
訳者が豪華です。竹取物語(北杜夫)、伊勢物語(俵万智)、太平記(平岩弓枝)、古事記(橋本治)、里見八犬伝(栗本薫)、源氏物語(瀬戸内寂聴)、万葉集(大岡信)、おくのほそ道(高橋治)……これだけでもわくわくしてきます。

 そのなかから1冊。50歳を目前にして亡くなった、干刈(ひかり)あがたの作品を選ぶことにしました。干刈あがたは、40歳になろうとしている1982年に、『樹下の家族』(朝日文庫)で海燕新人文学賞を受賞しデビューしました。その後、年に1作のペースで『ウホッホ探険隊』『ゆっくり東京女子マラソン』(いずれも福武文庫)と発表し、芥川賞候補になっています。しかしこれらの文庫は絶版になっており、紹介を控えていました。

 今回『21世紀少年少女古典文学館7・堤中納言物語(干刈あがた・訳)/うつほ物語(津島佑子・訳』(講談社)を読んで、どうしても干刈あがたという輝いていた女流作家を紹介したくなりました。

『堤中納言物語』は、角川ソフィア文庫や小学館『完訳・日本の古典27・堤中納言物語/無名草子』で読んでいました。しかし、干刈あがたの訳文は、ひと味違っていました。

 少将が昨夜の女のところに、手紙を書く場面を比較してみます。(「花桜折る少将」より)その前にお断りしておきますが、『堤中納言物語』は10の短篇で構成されています。引用させていただく。「花桜折る少将」(中将となっている訳書もあります)は、「虫愛づる姫君」とともに代表的な作品です。

◎訳文の違い

 何冊かの訳文を並べてみます。

――日さしあがるほどに起きたまひて、昨夜(よべ)のところに文(ふみ)書きたまふ(小学館『完訳日本の古典27堤中納言物語/無名草子』P15)

――日が高く上がる頃に、中将はお起きになって、昨夜の女のもとに手紙をお書きになる。(角川ソフィア文庫P25)

――日が空高くのぼるころ、中将はようやく目が覚めた。昨夜会った女に、手紙をしたためる。(蜂飼耳訳、光文社古典新訳文庫P23)

――日がすっかり上がったころに起きて、昨夜の女のところへ言い訳の手紙をしたためる。(中島京子訳、河出書房新社『日本文学全集03堤中納言物語』P250)

――この時代、男と女が愛をかわすには、あたりがうす暗くなってから男が女のところへ訪ねていき、夜が明けてあたりが明るくならないうちに帰る、というのがきまりのようになっていました。そして、女と会ったあとは。家に帰ったらすぐに女のもとに手紙を贈るものだったのですが、少将はひとねむりしてから、昨夜会った女のところに手紙を書きました。(干刈あがた・訳、P14)

 干刈あがたは脚注にたよらず、本文のなかに説明を溶けこませています。そのセンスは、みごとだと思います。

◎「花桜折る少将」と「虫愛づる姫君」

 引用文の「花桜折る少将」は、エンディングがおもしろい作品として有名です。角川ソフィア文庫では、その題名についての解説があります。

――「花桜折る」とは美女(=花)を手に入れるという意味。また、姿形が美しいという意味もある。だからこの題名から読者は、
「美貌の貴公子が美女を手に入れる話」と予想しながら読むことになる。(同書P18)

 この解説どおりに、貴公子は美女を手にいれたのでしょうか。結末を楽しんでください。

「虫愛づる姫君」は、絵本にもなっているようです。干刈あがたは「あとがき」のなかで、絵本では姫君のまわりを美しい蝶が舞っていたのに、と書いています。ところが原作は違います。光文社古典新訳文庫の帯には、次のようなコピーがあります。

――眉も剃らず、/お歯黒もつけず/夢中になるのは虫ばかり/ 元祖虫ガール

 このコピーの「眉も剃らず」は、結末の愉快な展開の伏線になっています。

◎瀬戸内寂聴も田辺聖子も絶賛

 本書の現代語訳をしている中島京子は「あとがき」に次のように書いています。

―― 一編一編が、小粒だがピリリとおもしろい。文体も主題も異なり、ほろりとさせたり笑わせたり、ちょっといじわるな観察を持ちこんだりとテイストも変えておきながら、どこか通底する音を響かせて、短編集のお手本のような一冊なのだ。(中島京子、河出書房新社『日本文学全集03』P494)

――シェイクスピアの喜劇のような物語集だが、なぜ『堤中納言物語』なのか、書名のいわれさえもわからない、謎だらけの本である。(阿刀田高・監修『日本の古典50冊』知的生きかた文庫P125)

 瀬戸内寂聴が晴美時代の著作『私の好きな古典の女たち』(新潮文庫)では、「虫めづる姫君」のほぼ全訳がなされています。そして最後に主人公の姫君について、次のように書いています。

――女たちが男のいいなり、親のいいなりになっていた平安の時代に、こんなにはっきり、自分の考えや思想を持って、世間の低俗な目などを相手にせず、真理だけを頼りに生きていた姫がいたとは何と愉快ではありませんか。(同書P86)

 田辺聖子も『文車日記・私の古典散歩』(新潮文庫)のなかで、「虫愛づる姫君」の紹介をしています。田辺聖子はこの短篇の書き手は、女性ではないかと推察しています。私もこの説を支持しています。これほど魅力的な女性を描けるのは、女性しかいないと思っています。

 平安時代に、こんなにユニークな短編集がまとめられていた。それだけでも驚きですが、すべての作品は完成されたものです。ぜひ読んでみてください。
(山本藤光2017.07.04)





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最終更新日  2017年11月28日 12時17分18秒
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