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2017年12月24日
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若合春侑『脳病院へまゐります。』(文春文庫)
わか若合春侑.jpg
昭和初期、濃密な男女のSMの世界。愛する男から虐げられつづける女にとって、心の救済とは何だったのか。第86回文学界新人賞を受賞した表題作ほか、「カタカナ三十九字の遺書」も収録。(「MARC」データベースより)

◎ペンピでしょうか?

どうしちゃったのでしょうか。若合春侑(わかい・すう)さまとは、20年近くもご無沙汰です。私は文学界新人賞をお取りになった『脳病院へまゐります。』(文春文庫)で、あなたさまにめろめろになっておりました。
 最新作を読んでから、処女作『脳病院へまゐります。』を語ろうと考えておりました。しかし、もう我慢の限界でございます。

 というわけで、若合春侑はあれっきり姿を現しません。しかたがありませんので、デビュー作について加筆修正することにしました。あなたさまのホームページも、10年前を最後にフリーズしております。おそらくペンピ(便秘ではありません)が、ひどいのでしょう。

◎Sのおまへさま

 若合春侑のデビュー作『脳病院へまゐります。』は、文学界新人賞を受賞し、芥川賞の候補作にもなっています。題名からわかるとおり、この作品は旧仮名遣いで書かれています。そのことについて、著者自身は次のように語っています。

――1997年11月から、ホームページに文章を掲載しているうちに、旧仮名遣いに変換するのが面白くなってきました。このアイデアで、12月に「脳病院へまゐります。」を執筆。(「週刊文春」1999年4月29日号)

 旧仮名遣いで書かれているものの、本書は読みにくくはありません。それは主人公「私」が「おまへさま」に宛てた、書簡のスタイルのせいでしょう。
「私」は「お春婆さん」が、手広く営んでいる会社の帳場をしています。旦那は戦争で外地へ出征中です。たまたま人手が足りなくて、「私」がカフェーの臨時女給をしたときに、「おまへさま」と知り合いました。

「おまへさま」は帝大の学生で、「不惑の貫祿で威嚴の光を放つやうな」文学青年です。二人はいつの間にか、寝床をともにするようになります。床の中で「おまへさま」は豹変します。
「おまへさま」は典型的な、サディストだったのです。そして「私」は嬉々として、それを受け入れていきます。やがて「おまへさま」は結婚し、「私」の旦那も片脚を失って戦地から戻ってきます。しかし二人の関係は変わりません。
 
――おまへさま、まうやめませう、私達。/私は、南品川のゼエムス坂病院へまゐります。苦しいのは、まう澤山だ。(本文より)

 書くのを憚られるような虐待を受けながら、「私」は「おまへさま」との日々を綴ります。切ない女の一念は、十分に伝わってきます。ここまで露骨に書く必要があるのかと、疑問の箇所もありました。しかし、結びの数行は、印象的でした。


◎「脳病院へまゐります。」といったきり

 収載作「カタカナ三十九字の遺書」は、現代文で書かれています。こちらの主人公・芙蓉も、健気に男に身を尽くします。
 物語は芙蓉が十二歳のときから仕えている、色川家の法要場面からはじまります。芙蓉は七十五歳になっています。先代ははるか昔に亡くなり、その後仕えた長男の喬太郎も急死します。
享年七十五歳でした。芙蓉は十五歳のとき、喬太郎に犯されます。それからも、三度の結婚を繰り返した喬太郎に、求められるまま身体を提供します。喬太郎の最初の妻は、彼が二十歳のときにアメリカ留学から連れ戻った女性でした。

 彼女はロオリイという名の十九歳。すでに懐妊しており、やがて祐太郎を出産します。しかし出産前後の風習に耐えられず、傷心で子供を連れて母国へ帰国してしまいます。
 
その祐太郎は帰国後、はじめて法要の席に姿を見せます。財産目当てであることは歴然としていますが、芙蓉はいわれるがままにします。家財道具が運び出され、喬太郎との想い出の家が取り壊されます。
 
戦時中、家族がすべて疎開したなかで、たった一人で家を守り切った芙蓉。芙蓉は、防空壕だった地下へと降ります。そして……。
若合春侑は、女性作家です。男性には書けそうもない、ラストシーンが絶妙でした。この作品でも、主人公は子宮感覚の幸せを味わいます。

約20年前に原稿を書いたまま、次作を楽しみに待ち続けていました。しびれが切れました。線香花火のように一瞬輝いていた、若合春侑は「腦病院へまゐります。」といったきり戻ってきません。
山本藤光1999.07.19初稿、201712.25改稿)






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最終更新日  2017年12月24日 10時57分36秒
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