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112:ウォーキング・ラリーの企画
札所めぐりは「標茶町ウォーキング・ラリー」と名称が変更され、会議が開催された。回を重ねるたびに、配付資料は厚みを増している。イベント責任者の宮瀬哲伸は、今回でまとめなければならないと焦っていた。はやる気持ちを抑えて、開会を宣言した。 「斉藤課長、前回の課題と新規事項があったら、発表してください」 斉藤は、役場の観光課に所属している。 「課題になっていた一泊二日コースの宿泊先ですが、セントラル温泉と満月家ホテルが賛同してくれました。これで予約客百組二百人までは対応可能になりました」 「ご苦労さま。それはよかった」 宮瀬は斉藤に礼を述べ、次の課題に目を落とした。そして森口観光課係長に、発言を求めた。彼はイベントの、ボランティア動員の責任者である。 「高校の方は山口生徒会長が中心となって、よくやってくれています。毎回三十人のボランティアの派遣は、可能となりました」 資料のページをめくりながら、宮瀬は並木観光課員に発言を求める。 「交渉中だった佐川民芸店は、竹とんぼの製作実体験を引き受けてくれました。したがって今回の資料では、八番スタンプ所に入れておきました」 「スタンプ所はこれで二十七カ所となったわけだね」 拍手が起こった。二十七というのは、日帰りコースの最終地点の番号である。 「では北村課長、メディア関係の進捗状況の報告をお願いします」 北村は役場の広報課に所属しており、メディア関係の窓口として多忙な毎日を送っている。 「北海道新聞と釧路新聞には、最終案が固まった時点で連絡を取ります。タウン誌くしろからも、取材依頼がきています。高校生の企画が実現した、とキャンペーン記事にしたいようです」 「パンフレットやポスターの作成に時間がかかるので、できればこのあたりで最終決定としていただきたいのですが」 斉藤は配付資料を小刻みに振りながら、宮瀬の顔をうかがっている。 「みなさんに異議がなければ、これで最終決定にさせていただきたい。スタートは本年七月からの土、日曜日。開催は七月から九月まで。これでいいですね」 宮瀬の言葉に、全員が拍手で応えた。宮瀬の顔に、安堵の色が浮かぶ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019年08月22日 04時06分33秒
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