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カテゴリ:書籍と雑誌
少し前に事情があって、俳句と短歌をまとめ読みしました。
俳句より短歌的叙情の方がずっとわかりやすいですな。 中学生のころだったかしら、NHKの通信高校講座見るのが好きでした。 それで茂吉の歌の授業なんぞ見ていたく感動して、そうそう、中学校の修学旅行は岩波文庫で出ていた『赤光』かなんか持っていった覚えがあります。 もう少し長くいたかったのに学校を卒業されられちゃってぷぅたろうになった時は、中野重治にハマったのでありました。 ま、中野重治さんの場合は短歌的叙情に別れを告げてプロレタリア詩の方へ行ってしまうわけですが、傑作「雨の降る品川駅」あたりは、非常に短歌的ではないかと私は勝手に思っております。 「今夜俺はお前の寝息を聞いてやる」って、ボブ・ディランだよね。 短歌じゃないじゃん。 そうそう、その前に早稲田短歌会を作った寺山修司さんにハマりました。 映画『田園に死す』(1974年)って好きなんだけど、あれは寺山の短歌ですね。 映画を観たのは上京してからだけど、寺山ワールドに浸ったのはむしろ高校生のころですね。 寺山さんは高校生を挑発するのが実にうまかった。 『家出のすすめ』おもしろかったものね。 今思えば、「自殺のすすめ」なんぞよりはずっと健全だわ。 のどかな県のんびり市にゆかりの歌人では、絶叫歌人福島泰樹さんがいます。 それで思い立って本の山をほじくりかえし、福島泰樹さんの本を発掘する。 でかいんだ、これが。 B5版上製、5百ページあるですよ。 福島さんの歌集をまとめたものです。 第一歌集『バリケード・一九六六年二月』(1969年)からの序が冒頭の一首。 > 樽見、君の肩に霜降れ > 眠らざる視界はるけく火群ゆらぐを これはご本人の思い入れがあるんだろうなあ。 樽見と呼びかける、強烈な歌。 バリケードの中でガリ版刷りの海賊版が出回ったという歌集です。 中島みゆき「誰のせいでもない雨が」(1983年)に唐突に現われる「滝川と後藤」が私には「樽見」と重なります。 この固有名詞の強さは何なんでしょう。 鈴木や佐藤では、ここまで強くなりませんね。 ♪ 私たちの船は 永く火の海を ♪ 沈みきれずに燃えている ♪ きのう滝川と後藤が帰らなかったってね ♪ 今ごろ遠かろうね寒かろうね Jackson Browneの"Rock me on the water"も周りが燃えている。 だから「ともかく僕は海に出て行く」のだ。 ♪ Rock me on the water ♪ I’ll get down to the sea somehow この火のイメージは、滅びなのだが、かすかな祝祭のようにも感じられるのはなぜか。 寒さの中で朦朧と浮かぶ炎。 友が消えていく。 若者はいっしょくたにしてしまうけど、早大闘争って全共闘じゃないんだ。 闘争後、福島さんがのんびり市の山中に暮らしたのは、7年間にも及ぶそうだ。 歌人福島泰樹さんは東京下谷にあるお寺の住職さんをしているんだけど、その本山が、のんびり市にあるのです。 今でも毎年桜の季節には、檀家の方々と一緒に本山を訪れます。 70年安保後、福島さんはのんびり市山中にある無住寺にやってきます。 本当に何もないその寺で、地元のおっさんたちの話を聞いて酒を飲むのが仕事みたいなものだったそうです。 そういうのは、私にはできない。 おそらく思索の時であり、修業の時だったのでしょう。 そこで絶叫を「発見」しました。 絶叫歌人の誕生です。 本の間に絶叫コンサートのチケットが挟まっていました。 >「福島泰樹短歌絶叫20周年記念コンサート > 遥かなる朋へ」 > 12月24日(月)浅草公会堂 > 福島泰樹・石塚俊明・菊池雅志 > 永畑雅人・松井亜由美・友川かずき クリスマスイブだね。 石塚俊明さんというのは、もちろん頭脳警察の「トシ」です。 とてもいい人らしいです。 友川かずきさんは、あの佐々木昭一郎さんの『さすらい』に出演していたフォーク・シンガーで、「生きてるっていってみろ」が羽仁五郎さんに絶賛されたりしました。 中原中也の詩を歌ったシリーズは傑作です。 まさに鬼才なのですが、身近にいると結構迷惑なところがある人らしいです。 こういう人たちをバックに、福島さんは中原中也を絶叫したりしていました。 のんびり市でも絶叫コンサートをやってくれました。 『絶叫、福島泰樹總集篇』 阿部出版 1991年12月発行 B5上製 本文498p 定価:本体2913円+悪税 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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