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Apr 27, 2007
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カテゴリ:日記小説

 14.

 官邸では非情の決断がなされていた。
 侠雑物であるジーマを排除すること、そして安藤美由紀を日本政府の手で保護すること。
 瞬間にして大量発生した警視庁の負傷者の山に、直ぐに警察は戦力として除外する決断が下った。
 警察の仕事は戦争ではない。
 荒川検問の突破から少し経って、また検問破りが発生した。
 今度は大規模だった。複数のトレーラー、コンボイの一団が侵入して来たというのだ。
 同時に、歌舞伎町方面でも動きがあった。複数の人員とそれに車両も動き始めているという。
 奴らだ。誰かが呟いた。
 これも、間違いないようだった。拠点を潰された中国が、強引に地上戦力を展開して来たのに違いない。
 これはもう既に、テロに名を借りた戦争以外の何者でも無かった。
 中国政府に問い合わせても、例によって知らぬ存ぜぬだった。
 首相は決断を下した。実力を以って、排除する。
 陸自の投入が即座に決定された。名目は治安の回復。



 市街戦、大尉に協力願う。

(大尉が指揮官ならどう最小戦力の投入で食い止めますか)

 歌舞伎町のチャイニーズマフィアは催涙ガス弾で無力化出来ると思います。
 但し、トレーラーで突入して来た部隊は、
 逆に致死性ガス弾で先制奇襲を企図してきた、という設定です。
 (彼らにとっては敵地なので容赦なし。特攻だし)
 先遣部隊に当然、犠牲者は出ますね?
 後続部隊は迅速に対化学戦を展開出来ますか?
 直協で潰すのが一番早いかな。
 戦闘ヘリでもぶつけますかね?

 彼らの戦闘目標は自衛隊戦力の突破とその先にいる美由紀の身柄の確保です。






 矢嶋はボヤいてみせた。
「マジかよ。遂に陸自で阻止線張ってきやがった」
 ダメよ!!ダメだからね?!と美由紀。
「ああ全くダメだよ。装甲車とじゃ勝負にならん」
 その場でスピンターン。一通の表示を当然、無視して路地裏に逃げる。
「ピックアップポイントはどこなの?」
 と智英。
「晴海方面なんだが・・・これはムリだな」
「逃し屋と連絡は取れないの」
「今は海上だから。無線機でもないと」
 無線機か・・・と智英。
「奪うしかないな。そして逃し屋と連絡する。会同点の変更だ」
 再びスピーンターン、ハマーは今来た経路を逆行する。そして急ブレーキ。矢嶋はハマーを停めて、先ほどのM700を片手に路上に立つ。
「どこへ行くの?!」
 美由紀の叫びに。
「決まってる。さっきの阻止線を強襲する」
 再び口を開いた美由紀に。
「大丈夫だ、優しくやるよ」
 言い置いて矢嶋は駆け出した。
 本当に身が軽い。M700をぶら下げていてもまるで羽毛の様だった。
 見当を付け、路地裏の狙撃ポイントに着いた。狙撃開始。自動小銃の様な射撃速度が可能な事に自分で驚く。
 自衛隊員が肩や足を撃たれ叫びを上げながら次々と路上に転がった。
 錬度の高い部隊だ。直ぐに矢嶋の射撃陣地を看破した様だ。
 応射が始まる前に気配でそれが判った。狙撃を切り上げ次の射撃ポイントに向け移動する。矢嶋の過去位置が銃弾で耕され、路地に積まれた雑貨や古新聞などが空中へ舞い散る。
 その時にはもう矢嶋は次の射撃を開始していた。再び殺すことなく慎重に部隊を無力化していく。
 移動と攻撃を3セット程繰り返したところで、部隊が恐慌状態に陥った気配を感じる。所謂モラルブレイクだ。それに気付いたのは、元々の経験とセンスだが更に磨かれて精度が上がっているのを感じる。負傷者を搬送しながら部隊は素早く撤収を始めた。やはり錬度の高い部隊だ、引き際を心得ている。装甲車、87式偵察警戒車が殿を勤めたがそれも直ぐに走り去った。助かった。歩兵を下げて装甲車が居座り、メクラ撃ちでもされたら厄介なコトになるところだ。ここ東京、自国の首都であるので手控えてくれたのだろう。
 十分距離を置いたのを確認して、矢嶋は路地から現れた。様々な備品が転がっていた。もちろん無線機も。
 そのハンディタイプの無線機を手に悠然と戻った矢嶋に比べ、二人は極度に緊張して見えた。如何に頭が廻ろうが、それなりに身体が動こうが、荒事とは無縁だ。戦闘に要求されるメンタルでの要素は大きい。トリガーを引く、相手を確実に傷つける。これを平静に行えるのは訓練による日常化だ。少々の身体能力でどうこう出来るものではない。一つ間違えれば相手を、否、基本的に兵士は相手を殺す為にトリガーを引く。その際要求されるコストは既述の通り。
 先ほどの戦場音楽ですっかりびびってしまったらしい。
 今さらながらに自分たちが”武力衝突”などというコトバ遊びと無縁のリアルな実戦の中にいることを。
 矢嶋はそれを平然と無視した。新兵のビビリでその度に立ち止まっていては作戦の完遂は当然不可能だ。
 例によってのブロークン・イングリッシュで会話を始めた矢嶋に、まず智英が、次いで美由紀が少しずつ血色を取り戻した、そして今さらながらに矢嶋を仰ぎ見た。
 矢島は、或いは凶獣、かもしれない。
 だが、今、自分たちは彼の庇護下にある。
 それは心から、有り難いことだった。
 智英は密かに自分を恥じた。先ほどの発言でこう心の中で付け加えていたのだ。
(でも矢嶋さん、あなたの存在自体が各勢力との衝突を誘発している事実も否めません)と。
 もし二人とも矢嶋の庇護下になかったら・・・美由紀は野垂れ死にしていたかもしれないし、とっくに中国に拉致されていたかもしれない、最善でも既に政府の保護下に。
 そして、おれは、こうして美由紀と再会することも。
 有難う、矢嶋さん。智英は心の中で彼に手を合わせた。
「話はついた」
 矢嶋が日本語に戻って言った。
「明日の午後、静岡に変更して貰った。このまま突破して神奈川に出るぞ」
 そう宣言したときだった。沈黙していたラジオが再び喋り始めたのは。





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Last updated  Apr 27, 2007 11:12:50 AM
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