日曜日に買った宗教学の本を読んでいた。
『はじめての宗教学 ―「風の谷のナウシカ」を読み解く―』
本屋でパラパラめくって楽しそうだな、と思ったので、買った。
確か、大学のときの講義の副読本みたいなものに指定されていた気がする。
しかし、題名に偽りありで、別にナウシカはちょっと触られている程度で、別に読み解かれてなんかいない。
語り部としての大ババ様に触れて、口承の文化が紹介されていたり、塙保己一が出てきたりとか。
そういえば、法華経の受記にも触れていたなあ、
本来、成仏しえない(かするのにすごい年月を有する)はずの舎利仏(サーリプトラ)が華光如来になるとかいうやつだったと思うけど。
・王蟲が、童子王であり永遠に成熟しえないゆえに力を有すること、
・ナウシカもその処女性が神秘性の淵源であり、かつヴ王がいうように「破壊と慈悲の混沌」である両義性を有すること
・ナウシカと王蟲は、明治天皇と西郷隆盛、源義経と武蔵坊弁慶のような異類婚姻による美女と野獣の構造を有していること
このあたりはおもしろいね。
というわけで、少ないぺージ数で
・予言と預言
・四大元素(エレメンツ)
・シャーマニズム
・聖処女
・童子王(童子八幡・稚児信仰・)
・トリックスター
・同性愛
・水子供養
・異類婚姻譚
・図象学
・色彩の秘密
・南方熊楠と粘菌
・貴種流離譚
・三位一体
・陰陽五行説
に触れているのは見事だと思うし、専門とされる密教(インド・チベット)の
ダーキニー、アクショビョーシャ、クリシュナ、クルクッラー、カーラチャクラ、チャクラサンヴァラ、ドゥルガー
マハーバーラタ、バガヴァッドギーターあたりは知らないことが多かったので、なるほど、と勉強になった。
でもさ、ちょっとした間違いを見つけたよ。
ナウシカが大地母神だというのはいいんだけどさ(聖母マリアは大事だし)、それがヴィーナスの末裔だとかいってんの。
ヴィーナスって大地母神だっけ?
地母神としては、ガイア、デメテル、レア、キュベレなどは有名だけどさ、
ヴィーナスは美と愛の女神だろって思った。
あとさ、童子王の説明のところで、関東で勢力を築く幼き足利義詮の話が出てきたんだけど、そこで
「足利家という家門が、新田家とは比べものにならないくらい高かった」という文章を目にした。
しかし、前にも説明したとおり、
八幡太郎義家の三男義国が新田・足利両氏の祖であり、
義国の長男義重から新田氏が、次男義康から足利氏が生まれる。
つまり新田氏は足利氏の兄にあたる家系であって、家格からいえば、「新田氏>足利氏」なのであって、だからこそ家康は新田氏の流れを僭称した(異説あり)といわれているのである。
基本的な間違いを見つけると本の信頼性全体がちょっと・・・・ってなるな。
ちなみに内容の深みの方も、大学一年生向けといったところで、宗教学についてまったく知りません、という人ならともかく、
多少の知識のある人だと、大して面白みのない本です。
もっと早くに読んでおけばよかったかな。