ベルギー・ギーデ王立吹奏楽団:ショスタコーヴィッチ 交響曲第10番
ベルギー・ギーデ王立交響吹奏楽団の新録音です。クラシックの吹奏楽への編曲というと、いろいろ問題があり、先頃もPIPERSで取り上げられ、話題になりました。また、先月号のPIPERSでも再び取り上げられ、伊藤康英氏が作曲家の視点での編曲の問題について、寄稿されていました。氏は基本的には、吹奏楽でどれだけオケに近い演奏が出来るかという観点からの編曲は、意味のないものと考えています。実際、東京佼成からの委嘱でショスタコーヴィッチの第5シンフォニーを編曲した際には、初演のプログラムに「とても価値のないものを作ってしまった」と書いたほどです。氏の場合には、クラシックの編曲は所謂トランスレーションではなく、アレンジまたは一種の創作を含むアレンジと考えているようです。私も、氏の意見には同意できます。閑話休題 ということで、今回の録音は、氏によるとあまり価値のないものの、部類に入りそうです。個人的には、昔は、吹奏楽のクラシックなんて、ギャルドを除いては、けっ!てなもんで、殆ど門前払いしていました。しかし、最近はその先入観?をあらため、積極的にというほどではありませんが、吹奏楽によるクラシックも多少は聞くようになりました。その理由となったのが、ベルギー・ギーデのラヴェル、ストラヴィンスキーなどでした。管弦楽に全く引けを取らない、まろやかな響きとスケール感に驚いたものです。また、最近の録音の充実ぶりもめざましいもので、今回も大いに期待して聞きました。 果たして、結果は満足のいくものでした。そのスケール、響きの洗練度、音の切れとも全く申し分ありません。編曲もこの曲に正攻法で取り組み、テンポを遅くしたり、音を間引いたりということもなく、最終楽章なども全くスムーズそのものです。これは、この楽団の優れた技量を念頭に置いての編曲だと思いますが、それにしても、鮮やかな演奏だと思います。 比較のためにオケの演奏(ハイティンク指揮LPO)を参考に聞きましたが、全く遜色ありません。管楽器の特性からして、息の長いフレーズは苦手であるはずですが、緩除楽章もなかなか健闘しています。シリアスな表情こそ、さすがに弦にはかないませんが、かなり良い線いっていると思います。曲が、吹奏楽に比較的合っているショスタコーヴィッチの作曲ということも要因としてはあると思いますが、ここまでの水準に達するのはなかなか難しいかなと思います。楽器の種類が多いということもあり、他の団体ではなかなか到達できないレベルとみました。 この録音の価値という話になると、判断がなかなか難しい面はありますが、そういうことを考えなければ、なかなか優れた演奏であると思います。以前の私と同じ状態の方なら、目から鱗状態になるかもしれません。Dmitri Shostakovich Symphony No.10 in E minor, opus 93 (WWM 500.116)Symphony No.10 In E Minor Op. 93(trans. Aurellio Perez) 1.Moderato 2.Allegro 3.Allegretto 4.Andante - AllegroRoyal Symphonic Band Of The Belgian Guides, Henrie AdamsRecorded 12,13 May 2005 at the Kazeme Kolonel De Hemptinne,Heverlee,Belgian