豪腕の記憶
未だにそのニュースの信憑性を疑ってしまう自分がいる…1990年代後半、格闘技【Kー1】の黄金時代を支えた一人、マイク・ベルナルド選手の訃報。キレイに剃りあげられたスキンヘッドに細くつり上がった目、かすっただけでも相手を倒すことのできる破壊力満点のパンチ。リング上の彼の姿からは、近寄りがたい雰囲気が漂っていた。その反面、リングを離れれば人懐こい笑顔でファンと接し、CMなどで愛嬌をふりまく。亡きアンディ・フグの遺志を汲み、志半ばでボクシングから再びKのリングに舞い戻る漢気の持ち主。四天王と呼ばれた中で唯一、Kのタイトルには手が届かなかったが、逆にそれが親近感となったのか、他の誰よりも万人から愛されるキャラクターだった。目を閉じれば、甦る名勝負の数々…デビュー戦でKOしたアンディ・フグを、テンプルに叩き込んだ右フック一発で再びマットに沈めたリベンジ戦。パンチだけかと思いきや、ハイキックでスタン・ザ・マンを倒した試合。いずれも壮絶を極めたピーター・アーツとの6度に渡る死闘。空手最強幻想を木っ端微塵に打ち砕いた、フランシスコ・フィリォを“なぶり殺し”にした試合。そして、壮絶極まる打ち合いの末、沸き起こった大歓声にラウンド終了のゴングがかき消されたジェロム・レ・バンナ戦。愛すべきマイク。今、ワタシは細やかながら、ひ弱な己が拳を天にかざし、君に哀悼の意を捧げる。さらば、豪腕。黙祷…ぎっちょ