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2007.08.05
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■臼井吉見は長野県出身の作家・評論家・編集者。
あとがきによれば、『週刊朝日』に
連載されていたものらしい。
だとすれば、ずいぶん堅い文章が載っていたものだ(^_^;)。

■とはいえ、筆者が扱う小説は、目次をたどると
「姦通小説と恋愛小説」に始まり、
「好色文学の問題」「痴情小説をめぐって」
「文学と道徳」「ワイセツと文学」と続く。

これで本書の半分弱になるが、
とにかく小説の扱う問題の大きな部分に、
恋愛と性衝動の問題があることが分かる。

■本書で多く取り上げらる作家に谷崎潤一郎がいる。
『痴人の愛』『鍵』『卍』『瘋癲老人日記』
といった作品が取り上げられるわけだが、
特に『鍵』における著者の指摘は興味深い。

それは、『鍵』の主人公である男性が、
大学教授であるにも関わらず、
授業の準備も講義も研究もしている気配がないこと。
そして、彼の専門が何なのかについても、
はっきりしないことである。

■この作品のこの問題に限らないが、
作家がある作品のなかで何を描き、
一方で何を描いていないのか、
その視点と判断基準は何なのかを考えながら
文学・小説を読むことが大切だろう。

■だとすれば『鍵』の主人公の視点とは、
どのようなものか。
当然、谷崎もどういう意図をもって、
そのような視点をもちこんだのか、
ということが興味深いわけだ。

とはいえ、それは意図されたものではなく、
単なる不注意なのかもしれないし、
いずれにせよそれをどう評価するのかが、
評論家の腕の見せ所となるだろう。

■著者の臼井吉見は、『鍵』を実験小説だとし、
上記の問題に対する評価については、
保留しているという感じで、少し残念。

なお本書は新潮文庫だが、とっくの昔に絶版である。





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最終更新日  2007.08.06 17:36:38
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