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諸星版グリムワールド。“乙女のための毒入りお菓子”または“最後まで出口の無い迷宮遊び”(o^-')b
諸星大二郎といえば民俗学的事実に基づいた幻想的世界で有名な、知る人ぞ知るカルト漫画家ですね。 この作品集は主に日本や中国を舞台にした彼には珍しく、グリム童話を下敷きに作られています。(といっても、諸星大二郎は諸星大二郎ですが(*^-^*) 8作品それぞれに味わいが違います。諸星氏の「特徴のある絵」が気にならなければ、買って損は無い作品集だと思います。 では、短評を。 「Gの日記」 最初から「悪夢のごとき世界」のお話です。というより、文字道理、夜見る“悪夢”ですね。最後まで、「グリム」の何の話を下敷きにしているか分かりません(分かったら凄い)。ただ作品のテーマはきっと「思春期の女性の内面的成長」でしょうね。それぞれ登場人物が何の象徴か、当てはめ遊びをしてみると面白いかも知れません。 「トゥルーデおばさん」 この作品が一番の傑作と思いました。筋、設定の条理と不条理のバランスが絶妙。主人公の女の子が、トゥルーデおばさんなる人物に“何故か”行こうと固い意志を持ち、「青」「黒」「赤」の三人の怪人物と接触するのですが・・・・。それぞれのシーンの会話や行動自体は筋道が通っているのですが、結局“何故”の謎は残り続ける様な、そうでない様な。 まるっきり、睡眠中に見る夢の様な話は、存外作るのが難しいものですが、それよりもっと難しいのは、この「トゥルーデおばさん」の様に絶妙なバランスで、いわば、「起きているのか寝ているのか分からない」作品だと思います。 「宇宙が何故(どのようにして、ではなく)あるのか」聞かれたような作品です。 「夏の庭と冬の庭」 作品としての完成度はこれが一番だと思います。「美女と野獣」をシニカルに引っ繰り返すコミカルな作品。伏線がこういう形で張られているのは初めて。 この作品も実は「思春期から大人の女性への内面的成長」が隠れテーマと捉える事が出来るでしょう。夢見るチャカリ乙女はどうなったか。 「赤ずきん」 最も筋がロジカルな完成度を持つ作品。「赤ずきん」の話って、元々、腑に落ちない点がありますよね。何で森の奥にお婆さんが一人で住んでいたのか、とか。そうした、疑問をロジカルにスパッと切って見せた作品。オチに「なるほど」。読後、作品への“納得度”が高い作品です。 「鉄のハインリヒ または蛙の王様」 宮崎駿が入ってませんか、諸星さん。 「いばら姫」 清水崇が入ってませんか、諸星さん。 「ブレーメンの楽隊」 あ、やられた。そりゃ、確かに「ブレーメンの楽隊」とハッキリ題名に書いてあるから、結末が“そう”であるには決まっているのだけれど。こういう筋の展開の仕方もあるのか。 ラストの頁、「にか~」と笑っている表情が、いい味出してます。 「ラプンツェル」 これも悪夢のような話。ただ逆に反って、「これは夢だ」と見れば、話自体は理解しやすいと思います。 一言で言えば「思春期の女性の内面的成長」の話(こればっか(^O^; )。心理学なんかでよく使われる分析手法で、分かりやすいほど分かる事象が出てきます。(謎の人物はシャドウだ、アニムスだ、の類) 考えてみれば、これらの作品は『ネムキ』という女性向け雑誌に掲載されていた作品でした。必然的に「思春期の女性の内面的成長」が隠れテーマになる事は考えられます。 さらに言えば、元々の「グリム童話」自体、無意識がひょっこり顔を覗かせている様な面がありますね。そこに諸星大二郎氏の無意識が呼応したといった所でしょうか。 オススメです。 トゥルーデおばさん お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年04月04日 07時48分28秒
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