夜の谷底の小道をあるいてきた。耳当てをしないと切れそうなほどまだ風は冷たいが、星空が降るようだ。ぶらりぶらぶら歩いていたら、むこうから道の端を黒いちいさいのがノロノロこちらへむかってくる。左脇をすっと通りすぎてからうしろ姿をちらとみれば、グレではないか。おいおい挨拶も無しにすぎるのかい、こらあ。数メートルあとから声をかけるがしらんぷりで尻を振ってなにやらいそしそと山のほうへ行ってしまった。狸かナンカと約束でもあるのか。狸が橋のまん中で大の字になって寝ている村だ。野良猫が恩知らずなのは仕方ないか。月は皓々と山一帯を照らし出している、春の夜だなあ。昼間すこし気になって猟師の家をのぞけば、隣犬がもう弱ってしまっている。日曜にわざわざ獣医がきてくれたそうだ。顔も身体全体も肉がそげおちてしまった。ビールを御馳走になって失礼した。連夜隣人はやけ酒をくらっているようだ。で、奴が観ている映画といえば『ミニミニ大作戦』や『死に花』などどれも銀行強盗バンザイな映画ばかりだ。金正日の地下金庫でもねらったらどうだ? さて、本日も暮れた、♪どんな不景気だって恋はインフレーションって、モーニングな娘の、仕方ないからLOVEマシーンでもかけて景気をつけて。♪アンタの笑顔は世界がうらやむ、とか。ばがちゃらぶんぷあぷあ。ニッポンノミライハなんだ?
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春閑の玄関先や梅が咲く 雑巾控