飛来するニッキ
今夜のリオ君は、不時着なしだった。放鳥開始時も、自分で出入り口まで来ていたので、明日からは自力で出てくるかもしれない。・・・手間いらずになると、少々つまらない。
さて、「巣上げ」という言葉は「巣引き」という言葉が廃れてから登場したのだろうと類推したので、巣引き屋から小鳥の獣医さんになった故高橋達志郎先生を思い出し、その子供向け伝記『小鳥の先生、ただいま診察中!』を見返していた。知らない人もいるだろうから(と言っても私もお会いしたことはなかった)、患者飼い主でもあった横田さんのこの本から、その偉大な人生をご紹介しておこう・・・。
高橋先生は東京都の衛生局で獣医として勤務していた1947年に、狂犬病ワクチンの副作用で、3年もの間寝たきりの状態にり、さらに1年5ヶ月間リハビリに励み、歩行器を使用して少し歩ける程度に回復し、退院される。そして、「なにか、ぼくにでもできる仕事」を考えて、カナリアや文鳥などなどの『巣引き屋』(小鳥の繁殖業者)となる。この本には、その当時、文鳥のヒナと戯れる先生のお写真が載っている。
多くの小鳥を飼育するので、当然ながらいろいろな病鳥と接する機会を持つことになる。先生は、もともとは獣医さんなので、亡くなった小鳥を解剖したり、いろいろと試行錯誤することになり、結果的に小鳥の治療技術を身につけられた。つまり、自分が繁殖に用いる小鳥を健康に保つためだったのだが、やがて小鳥の病気を治療できることが知れ渡り、診療を求めてやって来る人が増え、10年間の『巣引き屋』生活を経た1962年に、小鳥の病院を開院することになった。そして、以後、亡くなられる1994年までの30余年、小鳥の治療に尽力されている。
この本は、亡くなられる前年に刊行されており、晩年に自動車の運転をされている様子なども紹介されており、子供向けの本だが、まさに先生の一代記と言える内容となっている。そばに置いておくと、何となく功徳がありそうなので、古本屋で見かけることが奇跡的にあれば、お買い求めになって損はないだろう。
【中古】 小鳥の先生、ただいま診療中! おはなしノンフィクション3/横田順弥【作】,井上正治【絵】 【中古】afb
表紙