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雀坊の納戸~文鳥動向の備忘録~

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2015年10月05日
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 昨夜、このような記事(日刊サイゾー)を見かけて、呆気にとられた。 
 フジテレビの番組中、菅官房長官を、安倍政権の大番頭と紹介し、その際「オオバンガシラ」と読んだアナウンサーに対し、キャスターが「オオバントウ」と訂正したが、苦情があったらしく、番組の最後に「オオバンガシラ」が正解だった、と訂正してお詫びしたと言うのだ。しかし、これは「オオバントウ」が正解で、「オオバンガシラ」などと読まれたら、理解できる人はいなくなるのではなかろうか。
 もちろん、フジテレビの番組ディレクター氏がそうしたであろうように、慌てて辞書などで調べれば、「オオバンガシラ」の読みは昔から存在し、むしろそちらが本来の読みのように受け取れるはずである。さらに、そこに日本中世史の専門家がなぜか居たら、古代末期から中世の武家社会において、番役(警護役など)を務める者たち(番衆)の長の意味で、番長が存在し、京都御所などの主要な施設の警護を担う番役を、特に大番役と呼んでいたので、その頭だったものはオオバンガシラと呼ばれていたのではないか。くらいの講釈は聞けたかもしれない。さらに、江戸時代が好きな人なら、そうした武家社会の伝統が江戸幕府の職制に残り、軍陣において将軍の足下にあって、その周囲を固める部隊(に世襲で所属する旗本武士たち)を、大番組(オオバングミ)と呼び、その部隊を率いる侍大将の役割の者を大番頭(オオバンガシラ)とされていた、程度の知識を持っていて不思議はない。
 しかし、このように「オオバンガシラ」と読む大番頭は、その職制が消滅した明治以降は使用されることなく、歴史用語となってしまっている。鎌倉時代や江戸時代に使われていても、今現在には意味がないし、そもそもその言葉には、「総理の女房役」とか補佐役など、ナンバー2と言えるような実力者の意味を含んでいない。一方の、「オオバントウ」はと言えば、こちらは時代劇でよく登場する「番頭はん」で、現代人にも馴染みが深いものと思う。江戸時代の商家の主人(旦那)の下で、手代以下の使用人たちを監督し、実際の実務を切り盛りする責任者を番頭(バントウ)と呼び、大きな商家では番頭が複数いるので、その筆頭を大番頭(オオバントウ)と呼んだのを起源としているはずだが、そこには、元々から、商店のナンバー2である実務責任者(トップの「旦さん」は、普通、あまり実務を見ない)の意味を含んでいる。
 明治4年に西郷隆盛が井上馨を「三井の番頭さん」と揶揄した話は、結構有名なのだが、その江戸時代からの大商家三井が、やがて三井財閥となっても、実務責任者は「三井の大番頭」などと称されたように、会社のナンバー2や、組織のナンバー2を例える際に「オオバントウ」と呼ぶことが習慣化していった過程も、容易に想定できる。
 
 さて、官房長官は「内閣の女房役」などとも呼ばれ、内閣の実際を切り盛りするナンバー2の実力が期待される職掌なので、まさに「オオバントウ」以外の何ものでもない。「オオバントウ」の言葉を聞きなれない人は、おっとり刀で辞書を引いて、商人ではないので、番頭さんはおかしい、などと、今知ったばかりの「オオバンガシラ」が正しいなどと主張するかもしれないが、そのような理屈付けをするなら、現在の内閣に大番役など存在しないので、「オオバンガシラ」と呼ぶ方が不都合になってしまう。
 残念ながら「オオバンガシラ」には、元々、組織のナンバー2の意味は持たせ難いので(可能性としては軍陣における軍奉行的な役割程度)、「安倍政権のオオバンガシラ」などと言われても、何のことやらわからなくなり(組織の中の1セクションの責任者を意味すると見なせば、むしろ各省庁の大臣すべてが該当する)、例える意味が無くなってしまうのである。
 フジテレビの場合、「オオバントウさん」と、「さん」まで付けて注意したキャスター氏は、この言葉を使い慣れていたように思われるのに、それを安易に撤回させてしまうとは、残念なことであった。こうした『電波』により、「オオバントウ」の使い方も知らない人たちが、「オオバンガシラ」が本当なんだ!などと誤解しないように願いたい。
 
 ・・・それにしても、組織のナンバー2の例えとしての「オオバントウ」など、ごくありふれていた言い回しだと思っていたが、今や「オオバンガシラ」同様に死語となりつつあるようだ。国語の変化はなかなかに急ですな。この際、何も知らない若者たちが、「オオバンガシラ~」などと、苔の生えた歴史用語を突発的に使いまくってはやらせてくれたら、それはそれで歴史好きには面白おかしいので、頑張ってもらいたい。





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Last updated  2015年10月05日 14時15分18秒
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