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カテゴリ:工房的電波方向探査
+前の記事からの続き 方向探査を行う電波を受信するアンテナです。アンテナの数、設置する位置や間隔の精度が、そのまま方向表示の精度に直結します。 ドップラーRDFの要 方探アンテナの製作 受信電波にドップラー効果を与えることによって電波の到来方向を割り出すRDFにとって、大切な部分となります。本実験記で使用した方探アンテナは円周上に等間隔で4本。 到来方向を360°で検知するには原理的にこれ以上減らすことの出来ない必要最低限の本数です。逆に方探アンテナが多ければ多いほど方探精度も向上しますが、製作の工程が増えて大がかりなシステムになってしまいます。 その1の原理説明で少し触れましたが、本機では複数のアンテナを円周上にあらかじめ設置し、使用するアンテナを電気的に高速切り替えながら目的波を受信することで、「疑似的な」ドップラー効果が加わった信号波(FM波)を得ています。 今回はFM波を低周波のトーン波として取り出すのに市販受信機を流用する関係上、ドップラー効果のかかり方もナローFMの規格内となるよう考慮する必要があります。具体的には・・・ トーン音の周波数は音声帯域の真ん中の1kHz、シフトは搬送波の±1kHz程度となるよう、アンテナを設置する円周の半径と切り替え速度を選定します。 受信周波数は15MHz、アンテナを配置する円周の半径は3m、アンテナの本数は4本とし、このアンテナを各250μsの時間配分を設けて周回状に切り替えながら受信します。すると結果として、15MHzを中心として±942Hzシフト、変調周波数が1kHzのFM波が得られます。 *根拠となる計算式は記事末尾に掲載しています。 アンテナエレメント、給電線の構造 以上のようにアンテナの配置関係については精度を求められるのですが、エレメント部分についてはかなりラフな作り方をしています。地べたに1mの塩ビ管を立てて、ビニール線エレメントを沿わせています。最初は3.6m長のグラスロッド(タイトル写真)を支柱に使いましたが、1m長でも短波放送は強力に受信出来ますので、コンパクトで撤収も楽な塩ビ管アンテナが定番となりました。 接続する同軸ケーブルについても、送信用ではありませんから安価なTV用の3C2Vを使っています。給電部は芯線だけに接続し、網線はそのまま何もしていません。共振も整合も度外視OKです。ただし、ケーブルの長さ(物理長)と材質(波長短縮率)は4本ともキッチリ合わせる必要があります。特性が異なるのが1本でもあるとドップラー効果のかかり方がいびつになり、方探精度が悪化するからです。 アンテナの各種要素からシフト幅を求める公式 本機のアンテナ部は設計周波数を15MHzとしました。そのままでも極めて広帯域に使用する事が可能ですが、大きく異なる周波数帯では改めて設計しなおした方が良いかと思います。 送信源の周波数とアンテナの移動(回転)速度、さらにそのアンテナが受信した電波の周波数シフトとの関係を公式を元に求めてみましょう。 アンテナが周回する円の半径= 3m 毎秒ごとの回転数(p) = 1000回 とすると、 移動距離[V] = 2 x 3.14 x r x p = 18840(m/毎秒) つまり、1周 18.84m の円周上を秒速 18,840mで移動していることになります。 さらに 発信源の周波数(Ft) = 15MHz 光の速度(C) = 3x10^8 (m/毎秒) とすると、周波数のシフト(df)は次式で計算されます 周波数シフト[dF] = (Ft x V) / C 上の式に代入すると dF = 15 X 10^6 X 18840 / 3 X 10^8 = 942 近づく側の半円周と遠ざかる側の半円周で、それぞれプラスとマイナスのシフトが発生しますから周波数のシフトは ±942Hz となります。 なお、検波後のトーン周波数は毎秒ごとの回転数(p)のみで決定されますので、 1kHz です。 ここは受信機のオーディオ帯域のド真ん中を選んだ方が無難だと思いますが、アンテナ回転周期を変更することで任意に選べます。ただし上記計算式のとおり、アンテナ回転数を上げれば受信波のシフト幅が大きくなり、またトーン周波数も上がりますからFM受信機の規格を超えないよう注意が必要です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018.03.02 22:14:22
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