ガシャ・ポン 8 最終話
痛ってぇ。 しりもちをついた。 目を開けると 橋の上だった。 「ケンタ あぶないやろ!」 同級生が 脇を自転車で走り抜けて行った。 ぼくは のろのろと 立ち上がる。 こんなところで 何をやっていたんだろう。 同級生が呼んだとおり ぼくの名は ケンタ。 けれど・・・胸の奥がざわめく。 なにか もうひとつ とてもきれいで 大切な名前を持っていたような。 右手をにぎりしめていることに 気がついた。 開けば 百円玉。 思いだした。 ガシャポンをしに来たんだった。 あれ? 二百円持っていたはずなのに 落としたんだろうか。 ぼくは 橋の上に目を走らせる。 らんかんから 川をのぞいた。 川はにごっていて 百円玉が落ちていたってわかりゃしない。 にごった川をみたら 胸がキュンとした。 どうしてだろう 泣きたくなった。 目をあげたら カミ山が見えた。 ふいに 雨上がりの山が見たい と 思った。 百円玉を探すのは あきらめた。 残った百円玉を たもとのかげのガシャポンに 入れた。 ハンドルを回す。 ガシャッ。 カプセルがポンと 出た。 半透明のグリーンのカプセル。 ぼくは カプセルを持つ指に 力を入れた。 わずかに開いたカプセルのすきまから みどりの風が吹きつけた時 カプセルの小さな文字に気がついた。 <てんぐ> 次の瞬間 木の葉まじりの竜巻が ぼくを 空高く 舞い上げた。 写真byげこる「げこるでつくる」 ガシャ・ポン 天狗編も 書いたよ!