青い翼の吟遊詩人(7) 嫉妬のフジツボ
嫉妬のフジツボ? たとえば 好きだからこそ話もできない男の子と仲良くしていた女の子 とか 同じ服を百倍すてきに着こなしていた少女 とか ごくあたりまえに美しい文字を書いた女性 とか こういう嫉妬は ススキの葉に触れたような傷をつくる 痛いけれど いつのまにか 治る。 傷があったことも忘れる。 やっかいなのは 新鮮なナスのとげのように しなやかで 美しく 皮膚を通り抜けて 入りこんでくる 嫉妬 たとえば 作家Mの 文章 語り口 ストーリー 嫉妬のあまり 彼女の作品は すべて読破 たとえば あの人の 澄んだ音を捕らえる 感性 きらめく優しいトゲが すいっと 柔らかいトゲは抜けない 痛がゆさに毎日なでさすり 硬くなり フジツボとなる 「はがして 踏みつぶせ」 青い翼の少女が わたしのフジツボを はがそうとする 痛い! もう やめて! 振り払ったわたしに 少女は 「なにひとつ 捨てられない 嫉妬ひとつ 踏み潰せない その自己愛には もう うんざり」 そう言い捨てて 青い月へと帰って行った わたしは フジツボで重い体を引きずりながら 目覚めへとむかう 応援クリックに感謝!