夢屋7
やまぶき色の小さな店に おじさんがいた。 「やあ ずいぶん待たせちまって悪かったな。 としろうの夢はなんだい?」 ぼくは こぶしをにぎったまま 立っていた。 にぎったこぶしの中には ぼくの夢が入っている。 おじさんに見せようと 大切ににぎりしめて 待っていたんだ。 「あ・・・おう・・」 のどにつまったものは 言葉にならない。 かわりに 涙と鼻水があふれる。 ぼくは 鼻水をすすりながら にぎりこぶしを おじさんの鼻先に開いた。 「そうか そうだったのかい」 おじさんは深くうなずくと 両手で ぼくの手をぼくの夢ごと 包んでくれた。 「ああ 大丈夫だ。 としろうならきっと いい夢屋になれる。 あきらめちゃだめだ」 おじさんの言葉がゆっくりと ぼくに力を注いでくれる。 ぼくの手の中の ぼくの夢に光がともる。 ぼくの手を包むおじさんのごつごつした指のすきまから 光がこぼれる。 あきらめなくていいんだ。 ぼくの夢。 ぼくは安心して 声をだして 泣いた。 ドアを ノックする音。 いつもの 宇宙船の女の子。 ぼくは Dreamに 向かう。 ”6・1・14” と 打ち込む。 それから 女の子に 向き直った。 「きみ 名前は?」 女の子は 芽(めい)と 名のった。 「やっと わかったんだ。 にぎりしめた夢こそが 夢玉。 思いが 夢に力を与えるんだ。 ぼくは 芽の夢の力を 信じるよ」 君の夢を 信じる。 それが ぼくの 夢屋の仕事。 おしまい