■レビュー内容
「王としての在りかたをしめす言葉なのだ」
遂に完結ですね、30年だそうです、長かったです。新刊が出るたびに前の巻を読み返して、物語を思い出してから読むって作業を何度繰り返したことか…。ともかく、完結してよかった。次は創竜伝でしょうか…。
この続きどうなるんだろうって終わり方じゃなかったので良かった。十六翼将全員死ぬまで書いてあったし…。アルスラーンが王座に就くまでの話と蛇王ザッハークを倒す話は別物ですね。当然だけど前半の物語の方が面白かった。後半は早めにナルサスを殺してしまうことで、戦略や戦術の話を極力なくし、乱戦混戦で個人の戦闘に終始。再生した後に破壊するって物語も珍しいのでは…。最後のシンドラに渡ってからの話なんかは外伝が書けそうだけど、ないな。
それにしても、いたるところのブックレビューにひどい書かれ様だった。まぁ、言いたい気持ちはわかるが…。この結末以外、どうせいって言うんでしょうねぇ~。
■あらすじ【ネタバレ注意】■
アルスラーンはザーブル城を放棄し、エクバターナへ撤退する。政戦両略においてナルサスの死は影響を及ぼすが、アルスラーンはナルサスに止められた策を決断する。宮廷に近い女性陣を隣国シンドゥラへ疎開させる。女性陣の統率にはキシュワードの妻ナスリーン、護衛役兼国使はジャスワントが務め、ソレイマニエで捕虜としたバリパダも護送する。
一行は、ギランから海路でシンドゥラへ出港する。道中、帰国すれば死が待っているパリパダは、護衛の隙を突き牢から逃げ出す。パリパダは歴戦の勇者、相手が出来るのはジャスワントのみ。生かして捕まえたいジャスワントは、苦戦を強いられ、乱戦の末船から海へ転落、パリパダは死ぬが、ジャスワントも瀕死の重傷を負ってしまう。
ジャスワントは、重傷を押して、シンドドゥラ国王ラジェンドラに謁見、国書を渡す。ラジェンドラはパルスの窮状を知り、アルスラーンの申し出を悩んだ末に受け入れる。その言葉を聞くとジャスワントは息を引き取る。船の運航を任されたヨーファネスは、女性陣を残し、ジャスワントの遺灰と共に帰国の途に就く。
アルスラーンの国書には、パルスから移住してきた女性たちが、シンドゥラ内のパルスが所有する芸香(ヘンルーダ)農場へ居住することが記されていたのだった。
エクバターナに帰還を果たしたアルスラーンは、捕虜にしたブルハーンをメルレインとの決闘に処す。ブルハーンはジムサの弟だった。ブルハーンはメルレインの妹と妹婿を殺し、メルレインはジムサの弟を殺すことになった。
パルスの大領主カーゼルンのもとに、復活した蛇王ザッハークがとり憑いたアンドラゴラスが現れる。アンドラゴラスはカーゼルンの居城を得て、兵を集め始める。一方で、チュクル軍をイルテリシュに任せ、魔軍と共にエクバターナを襲わせ、グルガーンにエクバターナへ侵入し要人の暗殺を命じる。
全兵力をエクバターナに集結させたパルス軍に対し、チュクル軍がエクバターナ近くに迫る。パルス軍は、魔軍が襲来する前にチュクル軍を叩くことに成功する。そんな中、王宮でルーシャン卿がグルガーンに暗殺される。騒ぎを聞きつけたファランギースがグルガーンと対峙、その隙を突いてエラムがグルガーンを討ち取る。アルスラーンはルーシャンの後任の宰相にキシュワードを任命する。
ザーブル城を占拠したギスカールは、ナルサスが死んだことでパルス侵攻を本気で考え始める。アルスラーンはザーブル城に入ったマルヤム軍の物資庫を焼き払う策をメルレインに命じる。メルレインは100騎程のゾット族を率いて火を放ち、数万のマルヤム軍を混乱に陥れる。さらに、ファランギースが援軍を率いて参戦し、メルレインと共に国王ギスカールを討ち取る。ザーブル城内にいたヒルメスは火が放たれると、すぐにザーブル城から逃げ出していた。
アルスラーンは、ザーブル城に残るマルヤム軍に退去するよう使者を派遣する。残ったマルヤム軍は数日後の退去を承諾するが、そこにイルテリシュ率いる魔軍が襲来し、マルヤム軍を殲滅しザーブル城を占拠する。ザーブル城が魔軍に襲撃されるのを見たヒルメスはその場を離れ東へ向かうと、ミスル軍と遭遇する。ヒルメスはテュニプが死にフィトナが女王となっていることを知り、夜陰に紛れフィトナの天幕を訪れる。フィトナは、ヒルメスにミスル軍の先鋒となれと言う。
アンドラゴラス存命の噂を確かめるためギーヴは、カーゼルンの屋敷に忍び込み、尊師と呼ばれている若者がアンドラゴラスのことをザッハークと呼ぶのを聞くが、二人に発見され、その場からかろうじて逃げ出し、王都へ向かう。
数日後、エクバターナの南方にアンドラゴラス率いる軍が現れる。アンドラゴラスは陣中にバダフシャーンから前王妃タハミーネを連れ出し、娘だと言ってレイラと会わせると、タハミーネに自身と共に陣頭に立てという。タハミーネが拒否すると、アンドラゴラスは、二人を切り捨ててしまう。
アルスラーン軍は、騎兵で交互に出撃しアンドラゴラス軍を蹴散らす。カーゼルンの寄せ集めの兵では、統率されたアルスラーン軍の敵ではなかった。カーゼルンはダリューンに討ち取られる。しかし、乱戦の中、アンドラゴラスが姿を現す。パラフーダが蛇の毒液に倒れ、キシュワードが双刀の一本を折られ苦戦を強いられるが、ファランギースの援護に助けられ一旦退く。アンドラゴラスの出現で形勢が逆転、蛇王から放出される瘴気に兵が操られていた。
ギーヴは単騎で、ミスル軍へ向かっていた。途中、ミスル軍騎兵の中にヒルメスを見ると、ギーヴはヒルメスを阻止しようとせず、今すぐエクバターナへ向かえと助言し、消え去る。ギーヴは、ミスル軍本陣を確認すると、女王フィトナを射殺し5万の兵の進軍を阻止する。エクバターナへ向かったヒルメスは、アンドラゴラスの姿を確認する。
戦場は混戦となっていた。さらに、ザーブル城からイルテリシュとチュクル軍、魔軍が参戦する。エクバターナ城主クバードはイルテリシュを見咎めると一騎打ちの末、相討ちとなる。イスファーンは、尊師と呼ばれていた魔導士を見咎め、切りかかるが魔道によって倒されてしまう。アルスラーンはイスファーンの死をカイヴァーンの咆哮で知ると、自身も戦場へ出てイスファーンの元へ赴き、魔導士と対峙する。エラム、ギーヴ、ファランギースと共に魔導士を囲み、アルスラーンは宝剣ルクナバードで魔導士を仕留める。
メルレインはアンドラゴラスと対峙するが、ゾットの黒旗と供に倒される。ついに、アンドラゴラスが蛇王の姿を現す。ザッハークは敵も味方もなく殺戮をし始め、兵たちはザッハークの姿に四散していく。ザッハークはキシュワードを見つけ戦いを挑む。キシュワードはザッハークの両肩の蛇を切り落とすが、ザッハークの前に倒れる。
ダリューンは、ヒルメスを捜し戦場を駆け巡り、ヒルメスと対峙、叔父バフリーズと友ナルサスの仇を討ち、アルスラーンのもとへ帰参する。アルスラーンのもとに残った諸将、ダリューン、ファランギース、ギーヴ、エラムは、アルスラーンと共に蛇王ザッハークと対峙する。パルス歴326年5月1日「最後の戦い」が終わる。
翌5月2日。ダリューンらと馬を並べザッハークと対峙するアルスラーンは、ザッハークに出自を問うと、ザッハークは自身が人間の魔道から作られたのだと真実を語る。予期していたアルスラーンは、さらにザッハークにパルスを手にして後、何をするのかを問う。アルスラーンは、ザッハークの無益な言動に自らが勝利することを心に決し、「死せる王たちの戦い」が始まる。
アルスラーンはエクバターナ城門の前にエラムとファランギースと共にザッハークが来るのを待ち構え、ギーヴとダリューンは戦場をザッハークを求め駆け巡る。ダリューンとザッハークが対峙する。数十合の死闘の後、キシュワードが切り落とした両肩の蛇が再生しつつあることに気付いたダリューンは、右肩の蛇を粉砕、左肩の蛇からザッハークの左肩へ切り込むが、ザッハークの剣がダリューンの胸を貫く。アルスラーンがダリューンのもとへ駆け寄り、宝剣ルクナバードを抜き放ち、ザッハークと最後の戦いに挑む…。