■レビュー内容
「…おいらには三歩だ」
長々と続いた苦しい旅が終わり、ここからやっと本題が始まります。陽子の正体が判明する場面は爽快です。楽俊とのやりとりもいい。アニメも面白かったが、暗い話が長すぎました。こちらには塙王と塙麟の話は出て来ないし、延麒が延王を捜し出す話もここでは書かれてません。次巻が延王と延麒の話なんでしょうか、あとがきにあった陽子の話の前に書かれたのは「魔性の子」かなぁ、このシリーズでは出てないようです。
■あらすじ【ネタバレ注意】■
妖魔に襲われ続け、異界の人にも何度か裏切られ誰も信用しないと決めた陽子だったが、力尽き動けなくなってしまう。陽子を拾ったのはネズミの姿をした楽俊と言う半獣だった。陽子は楽俊を信用しなかったが、体力の回復を優先する。楽俊は陽子の世話をしながらこちらの世界のことや海客のことなどいろんなことを教えてくれた。
しばらくすると、母親が帰宅する。母親は普通の人だった。陽子の体力が回復すると楽俊は陽子を伴って雁国へ行くと言う。母親に準備をしてもらい陽子と楽俊は雁国へ行くため、港町の阿岸を目指すのだった。しかし、午寮の街を前に妖魔に襲われる。陽子は剣を取り妖魔を退けるのだが、楽俊が負傷する。陽子は楽俊を助けに戻ろうとするが、衛士が集まって来るのを見ると楽俊を残して逃げ出すのだった。一人に戻った陽子は阿岸を目指すのだが、またしても剣が見せる幻影と、その前後に現れる猿面の言葉に悩まされる。しかし、陽子は自身が人を信じることと、人が陽子を裏切ることには何の関係もない事を悟り、猿面を切って捨てるとそこにはなくしたはずの鞘があった。
二月を経てようやく雁国へ着いた陽子は、楽俊と再会、楽俊に謝るのだった。楽俊は陽子を役所へ連れて行き、海客の登録を済ませ、王宮のある関弓へ向かう。楽俊は陽子の身の上を聞き普通の海客ではないことを悟り、延王に助力を請おうとしていた。そんな折、陽子は楽俊との会話の中で、「台輔」と言う言葉を聞き、景麒がそう呼ばれていたことを楽俊に告げると、楽俊の態度が一変するのだった。
陽子を景麒が主と呼び、景麒が台輔と呼ばれていたことから、陽子は景王で景麒は慶国の麒麟景宰輔だと言うのだった。王様などと一概に信じられない陽子だったが、楽俊はすぐさま雁国の宰輔あてに書状をしたためるのだった。その夜、街中に妖魔が現れる。陽子はここまで追ってくることに絶望感を覚えつつ、妖魔と戦うのだが今まで以上に数が多く苦戦する。そこに助けに入る人物が現れ、妖魔を一蹴するのだった。その人物は、雁国王延と名乗るのだった。
延王は、陽子の持つ剣は代々慶国王が持つ水寓刀だと言い、陽子を景王と呼ぶのだった。延王は陽子と楽俊を玄英宮へ招くのだった。延麒も交え、陽子が置かれた立場と景麒の行方、慶国の現状が伝えられる。景王は塙王に命を狙われ、景麒は偽王に捕らわれ、慶国は麦州を除いて偽王軍に支配されていると言う。自分には王の資格などないと言う陽子は、せめて景麒は助けてやって欲しいと言う言葉に頷く。
陽子は楽俊の言葉に今出来る事をしようと決める。延王は、景王の求めに応じてと言う形をとり、偽王から景麒を取り戻すため兵を差し向ける。陽子は自らも剣を取り景麒を助け出すのだった…。