■レビュー内容
「小粘包。中には熱々のスライムがたっぷり」
物語が一気に進むのかと思いきや…、冷静に次の作戦を立て準備を始める。この理詰めの展開が気持ちいい。次々に新キャラが登場し、次なる展開の伏線が蒔かれてます、必読の一巻です。リムルの新たな能力のお披露目が待ち遠しい。ヴェルドラの大暴れも見られるのか…。なんにしろ、爽快にお願いします。
■あらすじ【ネタバレ注意】■
対外的な課題が山積みとなっているリムルは、解決に向けての準備に入る。まず、ちょっかいを出してきているクレイマンとその一味を叩き潰すため、蒼影に情報収集を命じる。そして、西方聖教会への対抗手段として解析の終わった無限牢獄からヴェルドラを解放する。リムルの用意した依代をもらい受けたヴェルドラが復活するのだった。
リムルは、ヴェルドラの妖気を押さえる修行に付き合い三日間が過ぎる。街では、突然の暴風竜の復活に動揺が広がり、洞窟の前に心配した住民らが集まっていた。心配をかけたといいリムルが現れると、妖気を押さえることに成功したヴェルドラを紹介するのだった。
ファルムス王国の侵攻から二週間。軍備を整えたブルムンド王国軍がヒューズの指揮で到着、さらに、ドアルゴンのガゼル王がペガサスナイツを率いて到着する。事態が解決したことを告げ、事の経緯を話すため会議を開くことに。街に帰るとエリンの父親で魔導王朝サリオンの使者大公爵エラルド・グリムワルトが来ていた。エラルドは、魔王の誕生がサリオン王朝に連なる者の助言であるその真偽の確認と魔国連邦を率いる覚醒魔王の真意を確かめに来たのだった。リムルは、会議への同席を促すのだった。
会議には、テンペストのリムル、ユーラザニアの三獣士、ドアルゴンのガゼル、ブルムンドのヒューズ、サリオンのエラルドらが出席する。まず、リムルは、今回の騒動の顛末を話すのだが、公にする筋書きは大きく変えるという。ヴェルドラの復活は、その妖気で多くの国が察知していることを利用し、ファルムス王国の軍勢はヴェルドラによって葬られたことにするというのだった。
テンペストの真意は、周囲の国と友好を結ぶには覚醒魔王がファルムス王国軍を葬ったのではその手を取ろうとする国は二の足を踏む。だが、ヴェルドラがやったのであればまさしく天災であるということ。覚醒魔王の出現とヴェルドラ復活で西方聖教会と敵対する事となるが、西方聖教会と繋がりが薄いドアルゴン、ブルムンド、サリオンの三国には障害とはなりにくいのだった。
エラルドは、小国ブルムンドの選択に疑問を持ち、魔国連邦に付く理由を尋ねる。ヒューズは、国王が魔王と暴風竜と敵対する選択肢は無いと言ったことを伝える。更にエラルドは、リムルに強大な力を得て何をしたいか尋ねる。リムルは、望むままに暮らしやすい世界、皆が笑って暮らせる国を作りたい、そのための力、力だけを求める趣味はないという。リムルの人となりに納得したエラルドは、娘エリューンのせいで覚醒魔王が誕生したなどと言われないためにも、リムルの提案に乗ることを決める。
当面の課題は、捕虜の扱いだった。リムルは、ファルムス国王を釈放し、テンペストへの賠償を求めるという。当然、賠償など素直に従うはずがないことを利用し、ファルムス王国で内紛を起こし新たな王に英雄ヨウムを就かせ、友好国とする計画を明かす。ヒューズは、ブルムンド国王の遠縁でファルムス王国のミュラー侯爵を通じてファルムス国内の工作を約すのだった。
クレイマンは苛立っていた。主と仰ぐ方の手助けで自身が覚醒魔王となるはずだった。ユーラザニアの住民の虐殺は、テンペストが住民を受け入れてしまい失敗、ファルムス王国軍の殲滅は、魔国連邦の主とその召喚した悪魔によって阻止されてしまった。だが、クレイマンは、ミリムを傀儡とし絶対的な力を手に入れ、魔王フレイの弱みを握り、次の手を考えるのだった。
クレイマン、中庸道化連を操ってファルムス王国を焚きつけたのは、自由組合総帥ユウキカグラザカだった。ユウキは、魔王レオンに斃された魔王呪術王(カースロード)カザリームを復活させ匿っていた。カザリームを会長と仰ぐ中庸道化連ラプラスは、ユウキの依頼で西方聖教会へ潜入していた。ラプラスは、西方聖教会本部ルミナス教の最深部で祭服を着た吸血鬼族を見たと言う。ユウキは、赤い光線を放ったという吸血鬼を鮮血の覇王魔王ヴァレンタインだという。魔物排斥を唱えるルミナス教が魔物どころか魔王を使役していること、そのことを騎士団長ヒナタカクラザカは知らないこと、気になることはあるがそれ以上の調査は困難だろうと判断する。ユウキは、次の手を考えるのだが、ラプラスの「魔王達の宴(ワルプルギス)を開いては?」の意見に乗るのだった…。