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カテゴリ:【物語】祈りの人:癒し人
祈りの人:癒し人 5 ~木陰~ 結局、リィは、一時間ともたずに休息を申し出ました。 悪いとは思いましたが、くらくらする頭で、仕事が続けられるとは 思えませんでした。 「水分、取ってくださいね」 信は、おぼつかない足取りのリィを支えながら、木陰へと連れて行きます。 ポットとプラスチックのコップを置くと、信は仕事へと戻っていきました。 「前は、こんなことなかったのに」 以前働いていた時は、多少の疲れは気にならず、体を動かすことが できました。 少なくとも、職務中にたちくらみを起こすなどことなどありませんでした。 「ここは、土地のもつエネルギーが強いから」 木陰で横になっていたリィの隣に、黒髪の少女が座りました。 「一緒にいてもいい?」 私も休息なの、とほんわり微笑んで、手に持っていた包みを 開きました。 黒塗りの箱に、朱の色の紐がかかっています。 少女は、するりとほどいて、ふたを開けました。 「よければ、どうぞ」 「ありがとう」 中には、果物や野菜の干したものが、つめこまれています。 普段見慣れないものでしたので、リィはおそるおそる口に運びました。 「…甘い」 「杏っていうの」 にこにこと笑って、少女は大木に寄りかかります。 「好きに食べていいから」 黒塗りの箱を指差して、そのまま、すうっと眠ってしまいました。 規則正しく寝息をたてて、寝ている少女を見ていると、 リィも眠たくなってきました。 おやすみ どからから、やわらかな声が聞こえてきます。 この声は誰だろうと思うまもなく、額に爽やかな風が吹いて、 そのまま深い眠りの世界へと誘われていきました。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.06.17 10:23:25
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