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カテゴリ:【物語】祈りの人:癒し人
祈りの人:癒し人 6 ~ブランケット~ どれぐらいの間を木陰で過ごしたのか、気づいてみれば、 日が暮れて、皆、作業を終えて、後片付けをしていました。 一緒にいた少女は、一休みして仕事に戻ってしまったのでしょう。 黒塗りの箱と、自分の分は取ったから、残りはリィにあげるという ことを簡潔に書いた手紙だけが置いてありました。 昼間とは違った、夕暮れどきの風がリィの髪を揺らします。 茜色から、群青色へと変わっていく空の色合いと、 ときどき煌く星たちを眺めて急いで立ち上がりました。 「夕飯の前に、礼拝堂へ行くんだったわ」 体を起こした瞬間に、リィの体からグリーンのギンガムチェックの ブランケットがはらりと落ちました。 「あの子が、かけてくれたのかしら」 落ちたブランケットをたたみながら、思い巡らしました。 ふと、信の顔が浮かんで、リィは少し心があたたかくなりました。 確証はありませんが、多分そうなのだろうなと思います。 黒塗りの箱と、グリーンのギンガムチェックのブランケットを 持って、ゆっくり薬草園を歩いていきました。 夜空で星がきらきら輝く中で、ひときわ大きく輝く宵の明星、 金星が姿を現していることに、リィは少しも気がつきませんでした。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.06.18 18:13:20
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