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カテゴリ:【物語】祈りの人:癒し人
祈りの人:癒し人 10 ~故郷~ リィの誕生日が過ぎてからほどなくして、信はリィの指導から 外れることになりました。 リィが慣れてきたことと、信には、さらに専門的な場で、 力を発揮して欲しいとのことでした。 「リィと信では、得意とする分野が違いますしね」 大天使ラファエルは微笑んで、リィには、さらなる高次のエネルギー とやりとりをすることになると話します。 二人は残念に思いましたが、お互いの学びのためと思い、 素直に導きを受け入れました。 それでも仕事の合間を縫っては、仲良く二人で話をしていました。 「私はね、戦災孤児なのよ」 軍に兵隊として、使役していた父は亡くなり、 リィを抱えて教会に宿を請いにきた母は、リィを残して 亡くなりました。 そのまま、同じような境遇の子供たちと一緒に、 教会で育てられ、成人して町にでてきたのだと話します。 「俺の家は、寺でして」 古くからある由緒正しい寺でしたが、なにしろ、 兄弟が多く、自分は、四人兄弟の末っ子だと話します。 「家は兄が継ぐし、俺は、なんの取柄もなくて」 僧侶の修行にも身が入らず、ぼけっとしているところを 父と祖父に巡礼の旅にでも行って来いと、たたき出されたのだと 笑います。 「へえ」 「リィさん、会ったら驚くと思いますよ」 男ばかりですから、と鼻を掻く信に微笑みます。 当然のように、家族に紹介することを前提に話している信を見て、 胸の奥がきゅうっとなりました。 「信さんも、私の育った教会に来てくれる?」 自分が育った場所、神父さんや牧師さん、お世話になった 寮母さんに会ってもらいたいと小さく呟きます。 「喜んで」 リィは嬉しそうに顔を輝かせます。 二人で笑いあっていると、仕事の始まりの鐘が鳴ったので、 急いでその場を後にしました。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.06.22 17:41:13
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