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Maryam's HP 日記

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2013年12月15日
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カテゴリ:おとぎ話 ”春”








こちらより 画像拝借

 

 

 

 

 

春の訪れ <5>

 





春は虚弱体質の娘であったが、
村の男の中には密かに 春 に想いを寄せているものもあった。

代々村医者の家系の長男坊に、晋吉というのがいた。

晋吉は年の程17であったが、
大層背が高く痩身で、それは颯爽とした感を漂わせずに、
見るものに手足と躰のバランスの悪い、不格好の感を与え、
本人もまた、その余分な上背を持て余しているのか、
いつも前かがみの姿勢を保っていた。

その上、近年は父にも勝る医者になろうと、
生真面目に益々磨きをかけて、勉学に励んだためか、近視眼が進み、
17歳の若さで、ぶ厚い眼鏡をかけることとなり、
遠目でみると、彼の父親なのか、彼自身なのか、
ぱっと見たところでは、判別できぬほど酷似していた。


春の母がまだ存命の頃、寒い風が吹き荒れたある晩、
村医者の力を求め、母が 春 を背負い、父がそれを助け、
晋吉の屋敷の戸を叩いたことがあった。

晋吉は、夜中にそんな出来事が起こっていようとは露知らず、
その翌朝になって、普段はひっそりとしている、
彼の部屋の向かい側の障子が中途半端に開けられており、
そこから、今はほとんと患者を診ることがなくなった、
彼の祖父が出て来るのを目にし、
それを不審に思い、その部屋にソロリと近づいたのだった。

彼が足音を忍ばせ障子に近づき、そっと覗いてみると
さして広くもないその部屋の真ん中には、
布団が敷かれ、そこには幼い娘が横たわっていたのだった。

青く白く整った横顔の中で、晋吉の目を惹いたのは、
梅の蕾を思わせる、形の良い鮮やかな紅色をした娘の唇だった。

小さな梅が綻び咲くように、唇が動くのと同時に、
娘の瞳が瞬き、晋吉に向かって

誰? 

っと尋ねてきたのだった。

晋吉は躰の真ん中に、一筋の光が差込みそれによって
躰が痺れ、熱(ほて)るような感を覚えたのだった。

慌てて彼はその場から退き、自分の部屋に戻り、
たった今、目にした夢のような光景を思い返し、
無意識にそれを、脳裏に焼き付けていたのだった。


晋吉はその後、父母や使用人の話から、
昨夜の出来事と、己の裡に一筋の光として飛び込んできた
幼い娘の名を知ることになったのだった。











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Last updated  2014年05月21日 11時56分28秒
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