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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:試写会
25日「空へ 救いの翼 RESCUE WING」@東京厚生年金会館大ホール
今回はシネトレさんのお招きだ。客入りは8割ほど。 映画の話 自衛隊航空救難団に入り、女性初の救難ヘリ操縦士となった遥風。過酷な訓練と数々の任務を経て、操縦士としての誇りや精神を学んでいく。そんな彼女に遭難した戦闘機パイロットを救出するというミッションが下される。 映画の感想 本作は一見優等生的な作風を装いながらも各エピソードの描き方は非常に雑だ。幾多のエピソードを積み重ね展開する物語なのだが、どのエピソードも“起承転結”で言う“起”が無かったり、“結”が無かったり、“承”と“転”が無く、“起”と“結”だけだったりと非常にお粗末な仕上がりである。 以下ネタばれ注意 まず、主人公が荒波に呑まれ沈没寸前の漁船の乗組員を救出に向かうのだが、4人の乗務員の内、3人は救助してヘリコプターの燃料の為に1人を残して救難を断念するシーンが出てくるが残された乗務員の行方を描いていない。せめて、報道という形で主人公が乗務員の死亡報道を見て苛まれるシーンが欲しい。 次に山から転落した登山者を救出に行くが、通信手段の無い登山者がどの様にして航空自衛隊にまで救難要請が出たのかが描かれていない。ここでは、山岳救助隊が落下する登山者を目撃して救難要請をするなどのシーンが必要だ。 次に、女性整備士と自衛隊員の恋愛が描かれるが、女性整備士が隊員に恋しているというシーンが出てくるが二人の直接的な恋愛描写も無く、次のシーンでは婚約している。これは起承転結の“承”“転”をぶっ飛ばした悪い例である。 次に、急病の少女はヘリコプターで搬送するシーンが出てくるが、ヘリの内部で目をつむり苦しがる少女と主人公の交流は一切無かったのに、後のシーンでは少女から主人公にお礼の手紙が名指しで届き、丁寧にも見ていなかったはずのヘリコプターの絵もほぼ正確に書いてある。なんともお粗末な演出で感動なんか出来る訳がない。 次に、クライマックスでタンカーから乗務員の救出に向かい、タンカーの爆発でヘリのメインパイロットが負傷して、副操縦士の主人公が操縦桿を握る事になるのだが、この事故と同時に仲間のパイロットが海上に墜落して救護を求めるというシーンになるのだが、その飛行機が墜落するシーンも無く、海上でプカプカ浮かび救難を待つパイロットでは訓練のようで緊迫感も何も無い。あまりにもシーンをはしょり過ぎである。 そしてラストもヘリの燃料が無くなり海上自衛隊の船に緊急着陸をして燃料を補給するシーンが出てくるが、このシーンは動く船に着陸した事が無い主人公が操縦するヘリが無事に着陸出来るかがメインであるのだが、事を終えたら映画は終わってしまう。ここはちゃんと燃料を補給して無事に基地に帰還し仲間に迎えられるシーンが欲しい。このシーンは起承転結の“結”が無いパターンだ。 ネタばれ終わり まぁ、これが新人監督なら「しょがないなぁ」と思えるが、本作の監督は東宝の看板作品で平成「ゴジラ」シリーズ3本でいい仕事をした手塚昌明だと言うのが悔しい。平成「ゴジラ」シリーズでは自衛隊の描写など絶妙な演出をした監督とは思えない雑な仕事にはガッカリした。 本作は航空自衛隊のプロパガンダ的な意味合いも含んでいるのかもしれないが、私のような一般の観客には事故が起こり、どの様な経路を辿り航空自衛隊にまで救難指令が発令されるまでが時系列に描くなど手塚監督にはディテールにこだわって欲しかった。 本作の目玉は主人公を演じた大型新人・高山侑子らしいが、個人的に「これはっ!」と思う俳優ではないように感じた。そんな中、主人公の上官を演じた木村佳乃の制服姿がキマッていて、凛々しい佇まいといい、もし復活するなら新しい「ゴジラ」の主人公を演じて欲しいと思ってしまった。これだけが本作の収穫だろう。 映画終了後の話 映画は終わり、何故か後方客席から拍手が沸きあがり「おかしいいな?」と思い、出口に向かうと後方客席に手塚昌明監督が来場していて、どうやら客席でインタビューを収録するみたいでした。「会場にいるなら舞台挨拶してくれればいいのに・・・。」と思いながら会場を後にした。 映画「空へ 救いの翼」の関連商品はこちら 【予約】サントラ/角川映画「空へ-救いの翼」オリジナル・サウンドトラック 手塚昌明監督の平成「ゴジラ」シリーズ 「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」オリジナル・サウンドトラック [DVDソフト] ゴジラ×メカゴジラ [DVDソフト] ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS スペシャル・エディション お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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