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ROEは高い方が良いのでしょうか? いえ、違います。 それでは、ROEは低い方が良いのでしょうか? いえ、違います。 ROEの数値を切り取って、高い方が良いとか低い方が良いとか、そういう事をいうのはナンセンスです。 PER、PBR、ROE。 投資家にとってはこれら3つのバランスが重要なのです。色々と特殊な場合を除けばPERは低い方が良いですが、PBRとROEについては低い方が良いとか高い方が良い とか、そういうものではないのです。 どのような事業で、どのような経営をしているのか、そしてこれからどのような経営をしていこうとしているのか、それによって変わります。 単純にPBRは低い方が良い、ROEは高い方が良い、というものではないのです。 いや、もちろんPBRは低い方が投資家の資産に対する評価が低くて長期的には投資妙味がある場合が多いでしょう。ROEは高い方が資産効率が良くて中期的に投資妙味がある場合が多いでしょう。そうすると、その2つを合わせて、PBRが低くてROEが高い方が良いでしょう。否定はしません。 ただ、これは同じPER 水準での話です。PBRが低いとその分ROEも低くなる。ROEが高ければPBRも高くなる。PERとPBRとROEの関係からすると、当然そうなります。 PBRを取るか、ROEを取るか。どちらが良いのでしょうか。 しかし、そういう話ではないのです。 それではROE編について、PER編やPBR編とは違った切り口から始めてみます。 ROEは自己資本をどれだけ効率的に運用しているかを表しています。 レバレッジをかけて負債を多くすると全体の資産が増えます。資産が増えると非効率的な企業運営をしていない限りその分利益が増えますので、ROEが上昇します。この点を問題視している投資家は多いです。 それでは、低い自己資本率で高ROEを叩き出している企業は悪いのでしょうか。 信用取引でレバレッジをかけて株式投資をしている投資家と似ています。 信用取引をすれば上昇相場では利益が急増しますし、下落相場では損失が急増します。 企業運営もレバレッジをかけていればその分順調な時に利益を多く出し、順調でない時に 損失を多く出します。 信用取引をして自己資本比率の高い企業に投資するのと、信用取引をしないで自己資本比率の低い企業に投資をするのと、どちらが安全でしょうか。 これは実に面白い問いですね。 勿論バランスです。企業側の企業運営内容や投資家側の投資手法にもよるでしょう。 ただ、そのような色々なパラメータを無視して、もうちょっと簡単に言う事が出来ます。 それは、『レバレッジをかけているリスクをしっかり認識して経営者が企業を運営しているか、 また投資家が投資をしているか』。 これに尽きます。 どのような環境下で、どのような状況で、どのようにレバレッジをかけているか。 ROEは長期的な推移が重要になります。 短期的にROEが高くても全く意味がありません。 長期的にROE水準を維持、または向上できるか。それに尽きます。 長期的にROEを維持・向上できる投資先があるなら、設備投資やM&Aをすれば良 いでしょう。 長期的にROEの維持・向上に繋がらない資産があるのであれば、改革や売却をすれば良いでしょう。 用途のない無駄な現金があるのであれば、配当として株主に還元するべきでしょう。 長期的に高ROEを維持する為には必ずしも高成長し続ける必要はありません。 自己資本が分母、利益が分子、の指標です。 利益により自己資本が増えて、今までのような効率的な資金運用ができない。それによりROEが長期的に低下する。それでは経営として非効率です。 増加した自己資本は必要な分だけ使用すれば良い。必要でないものを内部保留として溜め込む目的は何か?ROEを長期的に低下させてまで行う企業活動の意味は何か?成長の為ではない、現状維持のための資産がどんどん増えていないか? 効率的な将来の大きな投資の為、数年分の利益を溜め込む。そのような場合もあるでしょう。または、将来の利益を期待して、現時点では利益を出していない企業に投資する。そのような場合もあるでしょう。中期的にはROEが低下するが、長期的にみるとROEが上昇する。そのような場合はROEが下がったタイミングが投資家にとって投資妙味があります。(ここはROE推移に着目して投資をする投資家にとっての落とし穴ですので注意して下さい) 一時的に資本効率を下げるだけであれば、その先を見越して投資をするというのは一つの投資手法として正しいです。しかしこの手法は多くの成長株投資家の逆を行く投資手法ですので、かなり株価に対して鈍感力を必要とします。多くの場合は株価が急落しますので、 逆張り投資家でなければ非常に辛いでしょう。逆に、逆張り投資家であれば全く意に介することなく、気ままにドライブを楽しむように投資ができます。ただし、企業が思うように利益を上げられなかった場合はROEは低下したままになり、急落した株価は元に戻りません。長い株価低迷を余儀なくされます。 高いROEを維持しながら成長している企業については、例えばソフトバンクを見てみると分かり易いかもしれません。他にもエムスリーなどを見てみると分かり易いでしょう。 長期的に高ROEを維持している企業がどのように利益成長をし、それに伴い株価がどのように上昇しているか。 万年高ROE銘柄を見つけたら、将来の莫大な利益は確定されたようなものです。(とんでもないバブル時に購入したのでもない限り) しかし長期的にROEが高い銘柄を見極めるのは至難の業です。上に挙げた長期的に高ROEを維持している2銘柄でさえ、今後も長期的に高ROEを維持できるかどうかは全く分かりません。 そうであれば、現在資金効率の良い運営をしている評価の高い企業より、これから資金効率の良い運営をするようになる可能性がある企業に投資をする方が良い投資と言え ます。 それが低PBR銘柄への投資であり、バリュー投資の考え方の一つです。 今は低ROEが続いていても、これから企業運営が良くなるかもしれない。たとえそうならなくても、他の物好きな企業が高値で買収してくれるかもしれない。外部環境が変わって注目されるかもしれない。精々その程度の思惑で低ROE銘柄へ投資をしている投資家 が多いです。その程度でバリュー投資を標榜しているのが日本の個人投資家の現状です。 そして、そのバリュー投資の考えは概ね正しいです。 低ROE銘柄であっても、物凄く高い配当利回りの場合、高ROE銘柄への投資と同じ結果が期待できます。 もし仮に配当利回り15%を維持する銘柄であれば、ROEが15%を維持する銘柄と同じ評価をすることができます。 ただ実際は今の日本で高ROE銘柄と同じ水準の配当利回りを出し続けている銘柄がないだけです。また配当には税金がかかりますので、その分だけ低く評価する必要があります。 自己資本比率が高い銘柄ほど、不景気などで赤字になった時にとれる選択肢が増えると いうメリットはあります。 また負債が少ないほど金利上昇時に支払い利息の増加が少なくて済むというメリットがあります。(ただしマクロ経済の視点からみると、景気がピークアウトした時期などの例外を除いて支払利息の増加分より企業の増収分の方が高くなります。支払利息の増加は企業利益の増加に遅行します) 不況時は、レバレッジを効かせて多くの利益を上げている高ROE銘柄が業績悪化に伴い選択できる企業運営の幅が狭くなる一方、自己資本の潤沢な低ROE銘柄は安い買い物ができるようになります。 景気の波は時に大きく振れますので、リスクを常に把握していなければ自己資本比率の 低い企業は致命的なダメージを被ることがあります。信用取引をしている投資家と同じです。 結局はバランスなのです。 PER・PBR・ROE を画一的に論じるべきではありません。 企業の業績、企業活動の内容、今後の方針、景気動向、政府の方針、様々なことを考慮しつつ、投資家の性格と投資手法で考えるべきです。 これは投資に慣れていない人にとっては難しく聞こえるかもしれませんが、決して難しい事を言っているのではありません。 画一的にROEは高くてPERはできるだけ低い方が良い、という投資手法の方が遥かに難しいということを理解しなければいけません。 何故ならバランスが悪い企業は必ず無理が生じているからです。バランスの良い企業はそのうち投資家の想定以上に業績が上がることもありますが、バランスの悪い企業は時 が経つにつれ投資家の期待を裏切るからです。 ここから先は余談です。 常識を疑おう基礎編『PBR』で、同一PERならPBRを取るかROEを取るか、そういう考えで銘柄選定をするのではない、と言いました。 それでは PBRとROE のバランスはどのようなものが良いのでしょうか。 理想的なバランスはあるのでしょうか。 好景気はレバレッジをかけて、不景気になる前の予兆を見逃さず、不景気になる前にレバレッジを低くして運転資金の十分な確保を行う。それが理想です。 PBRとROEのバランスは景気や企業運営内容を考慮して決める必要があります。 理想的なバランスは日々変わっています。 どのようなリスクを取っている経営なのか。 経営者と同じく、投資家もこれを把握することです。 リスクを把握できないのであれば、高ROE銘柄への投資は行うべきではありません。高ROA銘柄への投資を行うべきです。 そして、万年高ROA銘柄への投資は、万年高ROE銘柄への投資より難しいです。何しろ絶対数が少ないですから。 妥協して万年中ROA銘柄への投資を行うのであれば、それは一つの正しい投資手法です。 以上 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.02.03 12:08:57
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