カテゴリ:現代短歌の曠野
栗木京子(くりき・きょうこ)
白き底見せて干さるる秋の舟をんなは臍より老いてゆくらむ 文房具盗みとりたくなるこころわかる気がする茸の秋は 死にたいと思ふわれより死ねないとみづからに言ふわれこそ哀し 誤差のなき共感はつねにあやふくて新内閣の支持率高し いま滴るる、もうすぐ黒きもの落ちる 九月の夕日炎えきはまりぬ * 九月来て昼の畳に寝ころべばわがふとももの息づきはじむ 麻酔のみ打ちて手術はせぬままに新内閣の色褪せゆけり ひし形の鋭き角と広き角どちらが好きと訊かず別れぬ 歌集「夏のうしろ」(平成15年・2003) 註 現代短歌、女性トップランナーの歌集である。 図書館で見つけ、一瞥して難しそうだなと思ったが、修行と思って目を通すことにした。 案の定というべきか、一首一首読み進むのが苦痛なぐらい稠密(ちゅうみつ)で透徹された世界である。ある種の、世界と存在の秘密を開示されているような気になる。 存在論的(オントロジカル)な世界といってもいいかもしれない。 言っては悪いかも知れないが、女性特有の陰に籠った意地悪で被害妄想的な感覚も全編に漂っていて、興味津々であると同時に、空恐ろしい不気味さに盈ちていることも否定できない。 作者は相当な美女才女だが、万が一会う機会があったとしても、決してお近づきにはなりたくないタイプの女性である(笑) ・・・やはり、彼女の脳髄の分泌物は、遠目に眺めているぐらいが適切だと思われる ![]() * 「9.11」を詠んだ。 ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.09.06 16:53:38
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