カテゴリ:シネマ/ドラマ
昨晩、NHK大河ドラマ「江 姫たちの戦国」第15回「猿の正体」を見た。
つい最近までは、「のだめカンタービレ大河」だの「フェアリーテイル(おとぎ話)ファンタジー大河」だのと、世評はさんざんだったと記憶している(・・・あ、オレも言ってたか? ![]() 12歳の時、政略結婚で佐治一成(さじ・かずなり)に嫁いだものの、これまた秀吉の政治軍事的都合で早々に仲を引き裂かれ、強引に離縁させられた江が、実はまだ生娘(きむすめ)だったと知ってウハウハ喜ぶ浅井三姉妹「にねえちゃん」の初姫。 この作品では今のところ徹底してコメディ・リリーフの扱いらしく、水川あさみさんの次女・お初が出てくるシーンは、相変わらずコント仕立てだが、けっこうスベリがなくて、毎回きっちりと笑わせてくれる。 茶々、江のビルの谷間のラーメン屋みたいな僕の好きな初姫 (拙作、歌誌「短歌人」3月号掲載) ・・・それにしても、生娘、ヴァージン、乙女座 Virgo。・・・いずれ劣らぬいい言葉ではありますのう ![]() そして、江が秀吉という権力者の謎に挑む「独裁者側近極秘取材・大坂城潜入ルポ・独占スクープ・要人連続インタビュー」のジャーナリスト的展開が滅法面白かった。脚本・田渕久美子氏の独壇場。 細かい伏線が縦横に組み合わされて徐々に期待が盛り上げられた中で、次第に浮かび上がってくる秀吉(この時「羽柴」、まもなく「豊臣」)という日本史上の一時代の寵児の底知れない凄さと魅力。 以前にも絶賛したが、演技派・岸谷五朗が、一挙手一投足・一台詞一表情に至るまで計算し尽くした大胆かつ緻密な演技を見せ、それがいちいち見事なドツボにハマって心揺さぶられる。 記憶に残っているだけでも、緒方拳、西田敏行、中村トオル、竹中直人、香川照之、柄本明など幾多の名優が演じてきた大役・秀吉に、岸谷によって今新たな1ページが開かれつつある。 喧嘩腰で喋って、本音が飛び交って、江を演じる上野樹里の目がみるみる潤んで、大粒の涙が頬を伝った時、人間ドラマとして、前半の一つのクライマックスだったと気が付いた。泣けた。 愛すべき直情径行の江を演じる上野の「ウハハハ~、ウへヘヘ~」みたいなベタな泣き方にはちょっと笑えてしまったが、人間、心底感極まると案外こんな風なマヌケな泣き方をするものだと、僕にも思い当たるフシがないでもない ![]() このようにして、サル殿は当時の全ての人心を鷲づかみにした。何ともすごい政治家である。菅首相を筆頭に、今のスケールの小さい政治家たちは、爪の垢かヘソのゴマでも入手して煎じて飲むといいだろう。 なにしろ秀吉の存命中は、さしものあの徳川家康だって本気で手は出せなかったのだから(「小牧・長久手の戦い」の鞘当てはあったが、互いの力量を見極めるや否や、すかさずシャンシャン手打ちしている)。 江が長姉・茶々に言う。「サルは大嘘つきです。でも、その大嘘の中に『まこと』があるのです。そのまことに人は動かされるのです。心動かされてしまうのです。」 歴史上稀なる「人たらし」秀吉を語りつつ、脚本の田渕さんは自らの作劇術についても語っているように思った。 いわばドラマの形を借りた「豊臣秀吉論&言語表現論」である。 そういえば、われわれ歌詠みも、ウソ(虚構)の中にまこと(まごころ)を詠むことがしばしばある。 拳拳服膺するにふさわしい、含蓄に富んだセリフだと思った。 なお、ストーリーを中断して歴史や思想の「論文」みたいなものが入るのは、ドストエフスキーや司馬遼太郎の長編小説にしばしば見られる専売特許的な手法だが、田渕女史はたぶんそういうのを読んでるんだろうな~とにらんだ。・・・っていうか、物書きならそりゃ当然か。 ところで、主演の上野樹里、回を重ねるごとにキレイになって来ている。ナチュラルで奔放で華やかな安土桃山時代のファッション・髪型が本当によく似合っている。 見るからに気の強そうなお姫様の役は、たぶんに地の部分でもあるのだろう。そういう演出もあるだろうが、何やら近寄りがたい貫禄と品格さえ漂って来たな~。 天真爛漫な喜怒哀楽や得意満面や、深い苦しみ悩み悔しさの表情も、真に迫っていてすごくステキ~ ![]() こりゃあ、薩摩・鹿児島の野育ち山出しの少女から、当時の日本のトップレディたる江戸城大奥の頂点に君臨し、その最後を見届けるまでを描いた「篤姫」の宮崎あおいの大女優道まっしぐらの再現だわいと思って、ますます楽しみに見ておりまする~ ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.04.27 10:30:52
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