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「75歳の新人女性作家」の実質(メジャー)デビュー作。文芸や言語表現に関心のある者なら、問答無用で読んでおかねばならない本だろう。確実に得るものがありそうだ。 全文横書き、かつ「固有名詞」を一切使わないという日本語の限界に挑んだ超実験小説ながら、その文章には、「昭和」の知的な家庭に生まれたひとりの幼子が成長し、両親を見送るまでの美しくしなやかな物語が隠されている。 私はまだ読んでいない(もちろん、近いうちに読むつもりだ)が、断片的に伝えられる内容・文体などは、私のヤマ勘で憶測するに、ムージル、古井由吉、保坂和志あたりの系譜だろうか。小説ではあろうけれども、やや現代詩寄りの作品かとも思う。言葉の表現に興味はあるが、ストーリー性とかにはほとんど興味がない私などにとっては、ど真ん中ストレートという気がして、今からわくわくしている。 著者は、昭和34年に早大教育学部を卒業後、教員・校正者などとして働きながら、半世紀以上ひたむきに「文学」と向き合ってきた。昭和38年には丹羽文雄が選考委員を務める「読売短編小説賞」に入選。 本書には、丹羽から「この作者には素質があるようだ」との選評を引き出した“幻のデビュー作”ほか2編も併録される。しかもその部分は右縦書きなので、前からも後ろからも読める「誰も見たことがない」装丁となっているのだという。 関係ないことだが、われわれ短歌実作者から見ると、経歴といい風貌・物腰といい、あの俵万智さんのそっくりさんぶりにも笑えるところだ。親子か姉妹と言われれば素直にそう思うだろう。ただ、こちらの方は「女仙人」のごとく、より達観した洒脱な人柄らしい。 果たして、“永遠の文学少女”である著者の「50年かけた小説修行」とはどのようなものだったのか。その答えは、本書を読んだ読者にしか分からない。文学の限りない可能性を示す、若々しくも成熟した作品を熟読玩味せよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.01.26 17:56:49
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