カテゴリ:百人一首
小倉百人一首 八十八
皇嘉門院別当(こうかもんいんのべっとう) 難波江の蘆のかりねのひとよゆゑ みをつくしてや恋ひわたるべき 千載和歌集 807 難波江のほとりの芦で作った粗末な小屋で その芦の刈り根の一節のように束の間の仮寝の一夜を過ごした人ゆえに 私は澪標のように身を尽くしていつまでも恋し続けるのだろうか。 註 難波江:現・大阪市中央区付近にあった入り江。一面に蘆(芦、葦)が生えた湿地帯だった。 かりねのひとよ:「(芦の)刈り根の一節」(「節と節との間」を表わす「よ」という古語があった)と「仮寝(かりそめのラヴ・アフェア)の一夜」を掛けている。 みをつくし:「澪標」は船の安全な航路を示す標識。古来、遠浅の難波潟の名物で、難波(大阪)の縁語。大阪の市章はこれを象ったもの。語源は「澪(水尾=水脈)つ(の)串」。「身を尽くし(身を捧げて)」と掛けている。 恋ひわたる:「わたる」は、時間的に長く(恋し続ける)の意。 (つくして)や(恋ひわたる)べき:~のだろうか。「や」があるので疑問形。 * 小倉百人一首の18番~20番には、この歌と場所や内容・発想に共通性がある歌が並んでいる。選者・藤原定家は、このモチーフに高い詩性を認めたのだろう。 18番 藤原敏行「住の江の岸に寄る波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ」 19番 伊勢「難波潟みじかき葦の節の間も逢はでこの世をすぐしてよとや」 20番 元良親王「わびぬれば今はたおなじ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022.10.22 02:09:33
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