カテゴリ:百人一首
小倉百人一首 八十三 藤原俊成(ふじわらのとしなり/しゅんぜい) 世の中よ道こそなけれ 思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる 千載 濁世 どこにも遁 深く思い込んで分け入った この俗世を離れた山の奥にも やはり物憂く鹿が鳴いているというのだよ。 註 小倉百人一首の選者・藤原定家の父の、いかにも玄人好みの秀歌。 初句の「よ」の用法が当時としてはきわめて斬新で、一種の「絶唱感」を齎している。 藤原俊成:本名「としなり」。有職 世の中:憂き世。愛別離苦などの煩悩の苦しみ多き現世 (世の中)よ:詠嘆・感動を表わす終助詞または間投助詞。「ああ、~だなあ」「~よのう」。現代文でしばしば使われる呼びかけの「よ」とはニュアンスが異なる。 道こそなけれ:逃れる道はないのだ。「こそ・・・けれ」は強調・整調の係り結び。「道」は「山」の縁語。 思ひ入 鹿ぞ鳴くなる:「ぞ・・・なる」も係り結びで、哀切の情をさらに強調している。「なる」は伝聞・推定の助動詞「なり」の連体形。 鹿の牡は交尾期の秋に「フィー」のように聞こえる鳴き声を発して牝に求愛する。「わびさび」を感じさせる物悲しい響きとして、古来多くの和歌に詠まれている。 この時季に妊娠した牝は、翌年初夏の5~7月頃1頭の仔を産み、仔鹿は生後約2年で成熟するという。 ニホンジカ ウィキメディア・コモンズ パブリック・ドメイン お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
October 22, 2022 04:56:02 AM
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