カテゴリ:百人一首
小倉百人一首 七十六
藤原忠通(ふじわらのただみち、法性寺入道前関白太政大臣) わたの原漕ぎ出でて見れば ひさかたの雲居にまがふ沖つ白波 詞花集 382 大海原に漕ぎ出して見てみれば 大空の白い雲に見紛う沖の白波。 註 平明でシンプルな表現ながら、伸びやかな調べの雄大な叙景の秀歌。 小野篁「わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣舟」(古今和歌集 407 / 小倉百人一首 11)の本歌取りだが、山部赤人の叙景の名歌「田子の浦ゆうち出でてみれば真白にぞ富士の高嶺に雪はふりける」(万葉集 314 / 小倉百人一首 4)の発想・言い回しの影響も感じられ、作者が大らかな万葉調のレトロスペクティヴ(擬古的・懐古趣味的)な表現を意図したことがうかがえる。 わた:上古語で「海」の意味。「わたつみ(海つ霊)」(海の霊、ひいては海)などの古い語彙に残る。 ひさかたの:天、空、月、雲などにかかる枕詞(まくらことば)。 雲居:雲のあるところ、すなわち空。転じて雲そのものをいう。 (沖)つ(白波):後世の「の」に当たるきわめて古い格助詞。「秋つ島」(秋津島、日本)、「天つ乙女」、「下つ毛の国」(下野国、野州、現・栃木県)、また上記の「わたつみ」など、成語・固有名詞として用例が多い。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
November 2, 2022 02:36:16 PM
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