カテゴリ:現代短歌の曠野
遠山勝雄(とおやま・かつお)
いつの日もとなりに同じ寝息ある幸ひ満ちていつまでふたり 対岸に日傘を振れる妻見えてわれも手をふりペダル踏み込む 妻とゆく手をとるほどの若さなく手をひくほどの老いにもあらず 病む妻に茶を注ぐわれの手の少しぶれて笑み合ふ秋陽のなか 添ひ遂げむ君と過ごしし春かぞふそれでももつと知りたき女よ 紅梅の色ます弥生わが孫の秘めたる恋も春雪のなか ひとり行くこぶし満開の山の道忘れたきこと忘れるために 晩秋の水霜あびし辛子菜を野うさぎとわれ朝あさ分け合ふ 海神にわが村かくす防潮堤浦のすて船ひとつただよふ 震災の海に育ちし岩牡蠣をひたすらむける陽のかぎるまで 第一歌集『銀のちろり』(令和6年・2024) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.06.16 06:54:07
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