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テーマ:司法試験・法科大学院(2282)
カテゴリ:教材全般
これまで,基本書,参考書,判例集,演習書,予備校本のそれぞれの選び方について記事を書いてきましたが,そこでは,基本的には自分の好きなものを選べばよいと言ってきました。
何せ,私自身が予備校本をガンダム関連の連想から選んだくらいですから。 そして,その考えは今も変わっていません。 ただ,最近,とある教材の選び方があることを聞いて違和感を覚えています。 予備校などが出版している司法試験・予備試験受験生向けの雑誌の中で,学部在学中に予備試験および司法試験に短期合格した合格者の使用していた教材が特集されていることがあります。 これについては,その雑誌の購読者でなくても,インターネット上で目にすることもあるでしょう。 そして,このような特集を見てみると,どうやら短期合格者は比較的薄い教材を選ぶ傾向があるようです。 そこで,短期合格者の使用教材ということで, 「これらの本を使って勉強すれば,自分も合格できるかもしれない。」 と考えて,同じ教材を選択したり,従来使っていた教材から乗り換えたりする受験生がいるそうなのです。 “短期”合格者使用教材という謳い文句は受験生にとって非常に魅力的なので,このように考えて教材を選ぶ受験生がいても何ら不思議はありません。 しかし,この選び方には注意しなければならない点があると思います。 まず,学部在学中に予備試験や司法試験に短期合格できてしまうような受験生は,ほぼ例外なく,途轍もなく優秀で非凡な学習能力を有しています。 具体的には,本を1回読めばその内容をほとんど覚えることができてしまうでしょうし,それだけに止まらず,10のことを読めばその内容から正しく推論して15も20もの力を発揮することができてしまいます。 つまり,あえて厚い教材を使わなくても受験勉強には足りるので薄い教材を選んでいるという側面があるのだと思います。 したがって, 「短期合格者の使用教材を使って勉強する。」 ↓ 「司法試験および予備試験に合格することができる。」 という命題は,正確性に欠けるだけでなく成り立つ可能性も決して高くないので,適切な教材選びという観点からは, 「自分は短期合格者と同等の学習能力を有している。」… ① ↓ 「短期合格者の使用教材を使って勉強する。」… ② ↓ 「司法試験および予備試験に合格することができる。」… ③ というように,前提条件として①を補う必要があると考えられます。 この視点を考慮せずに“短期”合格者使用教材という理由だけで同じような薄い教材を選んでしまうと,自分にとって適切な情報量よりも少ない分量の教材,すなわち,自分に合っていない教材で勉強することになってしまい,結果的に合格から遠ざかるという事態に陥ってしまう懸念があるのです。 教材選びの基本的な基準は自分の好みに合うかどうかで構わないと思いますが,それとは別に,その教材が自分の客観的な学習能力に照らして情報量や難易度などの面において適切かどうかという観点は忘れてはいけないと思います。 なお,以上の内容は一受験生の戯言ですので,こんなことを考えている人もいるのか程度に捉えてください。 次回は,訴訟物論争と民事訴訟法の基本書の選び方について。 それでは。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.12.28 08:55:00
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