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テーマ:司法試験・法科大学院(2195)
カテゴリ:商法の教材
伊藤靖史・大杉謙一・田中 亘・松井秀征『会社法(LEGAL QUEST)』[第4版](有斐閣,2018)550頁
※最新版は2021年3月発売の第5版 通称リークエの会社法。 同志社大学法学部教授の伊藤靖史博士,中央大学法科大学院教授の大杉謙一教授,東京大学社会科学研究所教授の田中亘博士,立教大学法学部教授の松井秀征教授の4名の共著による基本書。 平成26年改正に対応しています。 今回の改訂では,企業グループに関する第10章が新設されました。 本書は,言わずと知れた,現在,司法試験受験生に1番人気の会社法の基本書です。 ケーズメソッドを用いて分かりやすく記述されており,条文索引も細かく,『会社法判例百選』と『商法判例集』の判例番号にも対応しているということで,学習上の便宜も十分に図られています。 一般的には,会社法の基本書は本書を選んでおけば間違いないと思います。 もっとも,私のように共著は嫌だという人もいるでしょう。 そこで,そういう人は田中会社法を,共著は嫌だが田中会社法は厚すぎるという人は神田会社法を選べばよいのではないでしょうか。 今のところ,会社法の基本書についてはこのような選び方がベストかと思います。 それにしても,最近,シリーズ刊行が開始された当初と比べるとリークエシリーズに対する印象が随分変わったなと感じています。 弥永リーガルマインド手形法・小切手法の第2版補訂2版にリークエシリーズ刊行開始に関する小さなチラシが挟まっていたのですが,それによると,本シリーズで最初に刊行されたのは行政法と刑法各論だったようです。 これが2007年(平成19年)4月のことで,以来,10年以上の年月が経過しました。 有斐閣ホームページでは,リークエシリーズを, 「法科大学院時代の今,法学部で習得しておくべき『基本とは何か』を追求した,新しいコンセプトのテキスト・シリーズ。判例・学説の理論状況を織り交ぜた丁寧な解説に加え,事案解決能力を養うための練習問題も付け,読者を『法科大学院をめざす人に求められる水準』へと導くことをめざしています。」 という謳い文句で紹介しています。 さらに,上記の小さなチラシには, 「法科大学院への橋渡しを可能にする。」 というフレーズも記載されています。 ですから,私の中でリークエシリーズは,ずっと, 学部 < リークエ < 法科大学院 < 司法試験 という位置づけでした。 それが,今では会社法のほかにも民法Ⅵ(親族・相続),民事訴訟法,刑事訴訟法など,司法試験にまで十分対応できるレベルの基本書がシリーズの中からいくつも出版されています。 司法試験受験のための使える教材が増えるのは非常にありがたいことで,それはリークエシリーズについても同じくあてはまることです。 しかしながら,やはり, 「本来のコンセプトからは外れているのではないか。」 とか, 「オーバースペックなのではないか。」 といった印象がどうしても拭えません。 そのような意味で,私の中のリークエシリーズに対して抱いていたイメージがこの10年でだいぶ変わったなと感じました。 無論,これが悪いことだと言っているのではありません。 むしろポジティブな変化として捉えているのですが,それでも違和感を覚えているのは確かです。 次回も,商法の教材を紹介します。 それでは。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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三版は誤記誤植が沢山ありとても読みにくかった。売り物にはならないほど酷すぎ。有斐閣の名が泣く代物だった。四版はしっかり訂正され新たな誤記誤植ないことを祈る。
(2018.06.05 08:52:51)
葵新伍さんへ
コメント,ありがとうございます。 このブログの記念すべき初コメントです。 第3版には,有斐閣ホームページで公表されている訂正情報で確認できるだけでも29箇所もありました。 いくら平成26年改正が大きかったとはいえ,この誤植の数は私も多すぎると思います。 少なくとも,流石に上記29箇所の誤植に関しては第4版では訂正されていると思われますが,ブログでも触れた通り,今回の改訂では企業グループに関する第10章が新設されているので,その関係で新たな誤植が全くないとは言い切れません。 受験生の間で使用者が最も多く,内容に関しては揺るぎない定評がある基本書なだけに,私も第4版にはなるべく誤記誤植がないことを期待しています。 それにしても,この基本書の誤植問題は度々話題に上がっている気がします。 少し前には,青柳幸一『憲法』(尚学社)の誤植が酷いと騒がれていました。 また,葵新伍さんのコメントを見て,会社法制定直後の神田秀樹『会社法』[第八版]の誤植が非常に多くて,私も必死に自分で訂正していたのを思い出しました。 受験生にとっては,教材の誤植は,ストレスに感じたり勉強に対するテンションが下がったりもしかねない問題なので,著者・編者および出版社には細心の注意を払って校正に当たって頂きたいところです。 (2018.06.05 23:23:00) |