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テーマ:司法試験・法科大学院(2199)
カテゴリ:民事訴訟法の教材
裁判所職員総合研修所 監修『民事訴訟法講義案』[三訂版](司法協会,
2016)396頁 通称講義案または書研の民事訴訟法。 原著者は,『講義 民事訴訟』・『解析 民事訴訟』の著者でもある藤田広美教授です。 もっとも,藤田教授は,2007年7月に裁判官を辞職して弁護士登録をされており,同時に琉球大学法科大学院教授に就任されているので,それ以降の改訂は他の裁判所職員総合研修所教官を務める判事の方が行っているものと思われます。 本書は,横書きで図表も多少あり,本文は400頁弱しかありませんが,百選などと同じB5判なので頁数以上に分量は多いです。 実務ベースの内容で,論点も豊富に掲載されていますが,踏み込んだ議論についての記述はありません。 一方で,主に裁判所書記官の研修で使用することを想定したテキストなので,簡易裁判所の訴訟手続の特則,手形・小切手訴訟手続,少額訴訟に関する特則,督促手続のほか,裁判所書記官の所掌事務に関する記述が他の基本書よりも詳しいです。 本書は,新司法試験が開始された頃は最も人気のある基本書の1つでした。 噂に聞いたところによると,当時,東京大学法科大学院で教鞭を執っていた高橋宏志教授が学生に向けて, 「その本は裁判所書記官が使う本だから,法科大学院生が使うものではないよ。」 と注意したことがあるそうです。 それでも,東大ローの学生は,使うのを止めなかったり,表向きは伊藤眞『民事訴訟法』を使っているふりをしつつ裏では講義案を基本書として使っていたりしたそうです。 それぐらい人気を博していた本書でしたが,その原著者である藤田教授が『講義 民事訴訟』を刊行した頃から徐々に人気に翳りが見え始め,段々と使用者が減っていったようです。 私が在籍していた法科大学院ではSシリーズ民事訴訟法がテキストに指定されていたのですが,これでは受験対策には不十分だと思い,私も流行っていた本書を基本書として使用していました。 しかし,司法試験における民事訴訟法の出題傾向に照らすと,アカデミックな学説の議論に弱い本書は,現在ではベストな基本書とは言い難いと思います。 ちなみに,本書には判例索引が付いていません。 これは使用するうえで非常に不便な点です。 そこで,私は,法科大学院在籍時に周りの同級生に促されて本書の判例索引を自作しました。 全7頁ほどの分量でしたが,本書の判例の引用に誤植が多かったので作るのに非常に苦労したのを今でもよく覚えています。 次回も,民事訴訟法の教材を紹介します。 それでは。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.12.31 19:21:00
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