あまり路線バス事業者に対し厳しいコメントばかり書いていると、お前は本当はどっちの味方なんだ?と叱られそうだ。確かに路線バス事業者に辛らつなことばかり言っているが、これも愛情の裏返し、甲子園の阪神ファンが飛ばす野次と同じだとご理解いただければ。
『運輸と経済』3月号の特集で、老舗の路線バス事業者による論稿においては、「市内バス(いわゆる平バス)の赤字を内部補助して過疎地の公共交通を維持するためには高速バスによる利益が必要なため、単体で利益を出せばいい高速ツアーバスと競争するのは不平等」という論調であったが、名古屋大の加藤博和先生が書かれているように、少なくとも現行の法令では内部補助の必要性は否定されている。もっとも現実には、法改正前からの流れで、その内部補助によって守られている公共の足もかなりあるのは事実であり、その点を無視して今後のバス産業をあり方を云々するのは乱暴であることも承知している。ただし、法令が改正になった事実と、その趣旨だけは、各路線バス事業者には認識しておいて欲しいところである(いわゆる平バスを、公益性が高い公共交通としてどう守っていくべきか、という点については、またあらためてこのブログでも考えてみたい)。
先に書いた「路線バス事業者が高速ツアーバスの集合場所を問題にすればするほど、自らが駅前一等地の停留所を私物化して新規事業者に開放しない『既得権益者』と非難を浴びるリスクが高まる」といった点も、別に私もその意見をマスコミに伝えて炊きつけようとは考えていないし、少し極論かも知れないと自分でも思う。ただ、時代や立場が変われば何が正しいかも変わっていくということは、路線バス事業者の皆様にはご認識いただきたいし、これがその代表例である(路線バス事業者が、これまで自社の停留所を守るために、あるいは新しい停留所を設置するためにどれだけ努力なさってきたかよくわかるからこそ、あえてこの問題を「代表例」として挙げるのだ)。
今回の特集では、西日本鉄道の係長さんが自社の高速バスの事業展開についてかなり突っ込んで述べておられた。私自身、学生バイト時代から、友人(バス好きの仲間)たちと一体何度、九州の高速バスを乗り歩きに行ったことか。総じて高い車両グレードやサービスレベル。柔軟な営業施策。そして共同運行会社を一つにまとめるリーダーシップ。「高速バス王国」九州は私たちの憧れであったし、それは今でも変わらない。九州の高速バスのあの元気さを、九州以外の各地域の高速バスに持ち込むことができれば嬉しいし、それに自分が役に立てればもっと嬉しい。その意味で私は、学生バイト時代から何も変わらない、ただのバス好き、高速バスの応援団なのだ。