先週末は三連休で高速バスの送客人数も大きく膨れ上がる日だったので、昨日と本日、スタッフ達と一緒に三連休とその前後のデータを分析し、反省会を行なった。
私の会社では、スタッフが常時、路線ごと、出発日ごとの受注データを細かく分析し需要予測(フォーキャスト)を行なっている。そして、前年同曜日のブッキングカーブ(予約の伸び具合を示すグラフ)や、各企画実施会社にヒアリングした増発の台数なども勘案して販売予測(シミュレーション)を実施、それを各社にフィードバックする。それに基づいてさらなる増発(1便あたりの台数を増やす「続行便」や、その日だけ臨時に運行する「スポット増発」)を各社に提案しつつ、それでも完売が確実であれば販売価格を上げるように、逆に売り余らせそうなら下げるように提案する。虫眼鏡でしか読めないような細かいデータを分析するスタッフ達の姿はまるで研究者のようだし、それを元に増発や価格について各社に電話をかけまくる姿はまるで為替ディーラーのようだ。
今回の三連休は、春休みの特徴としてリードタイムが極めて短く(つまり直近の予約が多く)、各社とも弱気になって売り捌こうとしたので1週間ほど前にいったん単価が下がり、やはり売り切れそうになったので最後には単価が上がるという動きが、データから明確に見て取れた。未来のことなどわかるはずもないのに、手元のデータと想像上の消費者心理を中心に、高速路線バスの空席状況や週間天気予報などの外的要素を少し加え「この日の東京-大阪のスタンダード(一般的な貸切バス)タイプは7000円なら確実に完売する。8000円でも大丈夫なはず」などと各社に提案するのは勇気がいるが、それを後から「結果論だけど、もっと高い値段を付けるように言うべきだったんじゃないの?」と私にツメられるスタッフは少しかわいそうだ……。それでも、この「レベニューマネジメント」概念を導入したことで、高速ツアーバス業界が大きく成長したことは間違いない。
※ちなみに、その様子は「日経MJ」(08年6月23日)、「日経産業新聞」(11月9日)に詳しく紹介いただいている。著作権に配慮し記事そのものは紹介できないが、
その記事を取り上げたメルマガがあったので、そちらをご覧いただきたい。
そんな話をすると既存の路線バス事業者の方々は、皆さんそろって、高速ツアーバスは価格や運行が柔軟である点を「不公平だ」よくて「うらやましい」とおっしゃる。たしかに制度に差があるのは事実である。価格についても運行についても高速ツアーバスの規制は緩い。ただ、規制が緩いからと言って高速ツアーバスでも最初から上記のような販売方法をとっていたわけではない。高速ツアーバスを成長させるには何がキーか、分析したデータを元に企画実施会社と意見交換を何度も重ね、試行錯誤した末に出来上がった方法である。たまたま私は、ホテル勤務時代に「レベニューマネジメント」を担当していたので、アイデアやノウハウを簡単に提供できた側面はあるが、初めに「レベニューマネジメントありき」だったわけではない。仮に私たちのサイトが高速路線バスの販売を手がけていたなら、厳しい規制なりの課題解決方法をご提案できていただろう。価格以外にも課題はたくさんあるはずだし、長期的には規制は変えることができる。「できない理由」を探すより「できる方法」を見つけ出すことが重要なのだ。
ANAのような航空会社など「レベニューマネジメント部」という組織まである時代だから、高速バス業界でも「レベニューマネジメント」はますます重要度を増すだろう。ただ、この「高速バスにおけるレベニューマネジメント」も、高速ツアーバスに限っては確実に定着しつつあるのも事実で、私たちは、さらに何か、別の新しいアイデアを見つけ出さないといけないと感じている。業界に新しい風を吹き込み続けることこそ、私たちの存在意義だからだ。