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成定 竜一~高速バス新時代~

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2010.03.19
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カテゴリ:高速ツアーバス
昨年の高速ツアーバスの年間輸送人員は、年間400~450万人だったと推計している。2010年はその約30%増を目指している。業界全体の数字は集約できていないが、私のサイトに限って言えば今年に入ってから対前年20%台半ば増ということで、目標には少し不足だ。そもそも2007年は前年に対し約80%増、2008年は前年に対し約50%増、そして2009年は約30%増と、成長率は着実に鈍化してきている。ポートフォリオ別に見ると、全体の40%近くを占める首都圏~京阪神の成長率が10%前後の増加にとどまっている。その次の規模の首都圏~名古屋、首都圏~仙台が20%を切る成長率。上記3路線で全体の70%ほどのポーションを占めているから、他の路線(首都圏~青森や京阪神~鹿児島など)がいくら高い成長率を見せても全体の成長率は上がってこない。

私たちの会社が高速ツアーバスの予約受付事業に参入した2005年11月の時点で、全体の60%以上を首都圏~京阪神が占めていた。理由は二つ。高速ツアーバスという業態自体が、京阪神からTDRに、首都圏からUSJに観光客を送るというバスツアーの延長線上で生まれたため、元より同区間を中心に展開されていたこと。もう一つが、路線ポテンシャル(※)に比べて既存の高速路線バスが需要の掘り起こしを十分にできていなかったことだ。いつも書いている通り、既存事業者は大都市でのマーケティングがおおむね不得手だ。また他の同距離の夜行路線に比べて路線ポテンシャルが非常に大きいことから、何往復かを採算ベースに載せただけで「ドル箱」だと満足してしまっていたのである。
※「路線ポテンシャル」=「同区間の、鉄道・航空・自家用車などを含む総移動量」×「距離や競合条件等を勘案した上で、高速バスが本来占めるべき市場シェア」。「本来占めるべきシェア」は、例えば長距離になればなるほど所要時間差が大きくなるためバスは不利なので下がっていくし、鉄道側の直行列車の有無とか、鉄道駅と市街地中心地との距離、などの条件で変動する。

だから私たちでは、まず徹底して首都圏~京阪神を育て上げる戦略を採った。企画実施会社側で価格をリアルタイムに変動させられるようシステム改修すると同時に、私たちの側で徹底したデータ分析を随時行なって各社に情報をフィードバックし適切な価格設定をサポートすることで高速バスにおけるレベニューマネジメントの手法を確立。自社で旅行業免許を保有する貸切バス事業者に対し自社企画・自社運行のスタイルを提案し、商品ラインの拡充を急いだ。あわせて、メールマガジンやポイント付与キャンペーンなどウェブならではの手法で新規需要を開拓した。2007年、同区間の伸び率は最大で対前年3倍を超えた。その成功を踏まえ、同一の手法を2番手にあたる首都圏~名古屋、首都圏~仙台にも展開。実質初年度にあたる2006年に比べると、2009年の高速ツアーバス各社への送客人数は全国で3.5倍に増加している。

だが冒頭に書いたように、成長率は着実に鈍化しつつある。これも理由は二つ。一つは、全体の規模が大きくなったために、成長「率」で見るとどうしても数字が小さくなってしまうことだが、問題なのはもう一つの「頭打ち感」の方である。大都市間路線には「既存事業者が耕し忘れていた広大な空き地」があったために、いわば敵がいない状態で簡単に需要を掘り起こすことができた。その過程で一部の高速路線バスに影響を与えたことは確かだが、大都市間路線の高速バスのシェアは以前の数倍にまで成長したことも間違いない。しかし、その「空き地」はそろそろ尽きつつある。

残る「空き地」は、大都市~地方都市・観光地間の路線の、大都市側の潜在需要である。国交省のデータを分析し、高速路線バスの輸送シェア(ある区間の総移動量のうち、高速バスを使って移動している人の率)を方向別にソートしてみると、地方側居住者のシェアが大都市側居住者のシェアの約2倍となっている。中央高速バスにたとえて言うと、首都圏から山梨・長野に向かう出張者や観光客が(鉄道や自家用車ではなく)高速バスを選んでいる比率に比べ、長野・山梨から首都圏に向かう出張者や買い物客が高速バスを選んでいる比率が約2倍なのである。大都市側の、特に観光客については、間違いなく掘り起こし余地がある。これは長距離夜行路線でも同じ傾向なのだ。

だからこそ私たちは、高速路線バスの取扱いをさせてもらい乗車率の向上に役立ちたいと、高速路線バスを運行する既存事業者にご提案している。ただそれも、「予約サイト」の立場だからできることだ。高速ツアーバス各社の立場に立てば、「おいおい、我々を置いていくのかよ。一緒に成長させてくれよ」ということになるだろう。ただ、ほとんどの企画実施会社はウェブによる集客だけに頼っている。大都市間のような「空き地」ならともかく、既存事業者が地元での圧倒的な存在感から市場の掘り起こしを済ませ、それを元に多頻度で便利な高速路線バスを運行している区間に、ウェブによる集客だけで後発参入するのはかなり難しい……その意味で高速ツアーバスは「踊り場」に差し掛かりつつある。

さて、既存事業者やその関係者の方で、ここまで読んで「そうか、憎きツアーバスは頭打ちなのか。一息つけるな」と感じた方、どれくらいいらっしゃるだろうか。もしいらっしゃるなら、その考え方、その危機感不足こそが高速路線バスを、いや路線バス業界全体をこの体たらくに導いてしまったことを大いに反省すべきである。頭打ちなのは「これまでの」高速ツアーバスの事業モデルでしかない。高速ツアーバスの第1フェーズは(安全面等のブラッシュアップは除き、ビジネスモデルとしては)ほぼ完成に近づきつつあるが、高速ツアーバスの挑戦の「第2フェーズ」がこれからスタートするだけのことだ。そのための戦略、必要なパートナー……一つ一つ組み立て上げることこそ私たちの腕の見せ所だ。

私のサイトでは、高速路線バスの取扱いも今後順調に増えていくだろうが、高速路線バス“だけ”の味方をするつもりもまた、いっさいない。路線やツアーといった業態を問わず、高速バスの「知恵袋」として取引先にアイデアを提供し、かつ高速バスに1人でも多くの利用者を掘り起こすことこそ、私たちの役割である。業界全体でさらに成長できると確信しているからだ。「成長なんてしなくていいから、とにかく波風は立てないでほしい」などという後ろ向きの事業者やその担当者なら、申し訳ないが、お役に立てることはないだろう。もちろん、高速ツアーバス企画実施会社でもそんなメンタリティの会社なら同様だ。私たちは今後とも、「1人でも多くのお客様に自社のバスに乗ってもらうにはどうすればいいか」を本気で考えている会社とだけ、お取引させてもらえればそれでいい。





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Last updated  2010.03.19 19:19:26
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
京帝117@ Re:新宿高速バスターミナル(02/21) 私がカウンターに座っていた時は、空いて…

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