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成定 竜一~高速バス新時代~

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2012.02.26
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カテゴリ:高速ツアーバス
事前に公表されていた議題(「高速ツアーバスの『新高速バス』への移行について)が議題だったためか、あるいは前日の「発車オーライネット戦略共有会」で皆の前で、<明日は「あり方検討会」>と言ったためか、23日午後の「バス事業のあり方検討会」の結果について多くの方からご質問をいただいた。議事自体は非公開(後日、議事概要は公開される)だし手元資料にも「委員限り」のものが多いので全て書くわけにはいかないが、ざっくり言うと、「あり方検討会」のテーマの一つであった「高速乗合バス(本ブログでは高速路線バスと記載)と高速ツアーバスの一本化」については無事に議論を終えることができ、あとは実務的な作業が(山ほど)待っている、という状態になった、と断言していいだろう。

繰り返すが、私自身は今回の結論は100点満点だとは考えていない。今回のオペレーションが完了した後、高速バス事業への新規参入は今より困難になる。もちろん、参入のハードルが低すぎることは安全性などにおいて問題を誘引することになるが、高すぎれば競争原理が働かずサービス水準が低下(価格の高止まりも含め)し、結果として業界全体の成長を阻害する。冷静に議論できればさえ、新規参入のハードルを上げずに高速ツアーバスが抱える問題を解決することは不可能ではなかったとは思うしその点では不満が残るが、まあ80点、手前味噌かも知れぬが十分に合格点がつく新制度ではなかろうか。

むしろ「既存組」高速路線バス事業者の中には不満も大きいことはよく承知しているが、十分に議論が重ねられた上の結論であることだけは、よく承知しておいてほしい(それどころか、このような会議が持たれたこと自体、「既存組」のリクエストによるものだ)。いや、今回の結論は、必ず「既存組」にとって大きなメリットをもたらすはずだ。失礼を承知で言いきってしまえば、今回の結論を「ツアーバス寄り」だと非難するならば、それは今後起こり得る高速バス市場の変化について想像力が不足しているだけである。

さて、終わってみればそうなるより他ない結論を皆で導き出すまで1年以上がかかったことになるが、時間がかかった大きな理由の一つが、相互の無理解だったような気がする。私自身の経験が、そう思わせるのである。6年前、「市井の一マニア」だった私は楽天に転職した。その時の思いはあくまでも「既存組」高速路線バスを販売力のある楽天トラベルで取扱って成長を助けたい、というもので、その時点ではガチガチの「アンチ・ツアーバス」論者だったと言っていい。だから私は、自分で選んだ仕事とはいえ高速ツアーバス各社の経営者、担当者と会うのが嫌だった。むしろ、彼らが怖かった。高速ツアーバスを企画している中小旅行会社の経営者など、さすがにヤ○ザとは言わないが、法の網の穴をついて、既得権益に風穴を開けてやろうと暗い情念に燃えている(イメージで言えば、瞳の中に青白い炎が見えるような)連中だとばかり思っていたのだ。

だが仕事だから会わぬわけにはいかない。実際に会ってみると、彼らの屈託のなさに驚いた。<成定さん、今度こんなアイデア思いついたんだけど売れるかなあ?>。それをやったら「既存組」は顔を真っ赤にして起こるだろうということまで、思いついたことが嬉しくて仕方ない様子で話しかけてくる。最初、その感覚が理解できなかったのだが、ある日、そうかと思い当たったのだ。考えてみれば単純な話で、旅行会社や貸切バス会社を自ら作ってしまった人たちである。お客様が喜ぶアイデアを思いつき、それを形にしていくことが、ただ楽しくて仕方ないのである。彼らは皆、オフィスの社長席などに座っているより、自ら旗を持って添乗に出ていたい人たちなのである(その辺り、『バスラマ』前号での平成・田倉社長の、また最新号のウィラー村瀬社長のインタビューをぜひ読んでいただきたい←ついでに『年鑑バスラマ』の私の原稿もぜひ)。

私自身が、同じ理由でホテルという就職先を選んだ身だから、そう思って見てみると彼らの気持ちは手に取るようにわかる。ただ、路線バスという世界に立った場合、その屈託のなさが、まるで喧嘩を売られているように見えていたのである。皆、<ツアーバスの連中は(人間的に)信用できない>という思いが先に立っていたのだろうが、1年間議論を繰り返す中で、少なくともその場にいる皆さんは、相互に理解が進んだと理解できよう。

さらに高速ツアーバス各社の経営環境の話もある。もともと気の合う仲間と作った(ほとんどが、当時人気の絶頂だったスキーの愛好家たちがスキーツアーの会社を作ったパターンだ)小さな会社が、今や100人、数百人の生活を支えるまでに成長した。これまではがむしゃらに走り続けてきたが(その「がむしゃら感」に賛否あるとはいえ)、そろそろ、事業の安定や永続を考えるフェーズに入ったのだ。これまでの事業モデルを捨て移行するのは物心両面で不満がないわけではないが、いろいろ考えた末に皆が決断をした、ということなのだ。私自身も、彼らから「乗合の手先」と非難されても仕方ない環境のなかで、真摯に彼らの説得に努めてきたつもりだ。そのことは、全委員にご理解いただけたと思う。

先日の「発車オーライネット戦略共有会」での質疑応答など聞いても、その辺りの理解は、未だ全ての「既存組」事業者に進んでいるわけではないようだが、高速ツアーバス各社が最終的に理解してくれたように、彼らにも真摯にご説明を繰り返すよりないだろう。

さて、本日は某社の高速バス車内。明日朝イチの新幹線でも間に合う出張だが、初めての街で本を読みながら一人でお酒を飲むのが趣味の私は、高速バス+前泊を選んだ。昼行便にしては長い5時間の乗車もそろそろ終着。ひと月ほど前ならもう薄暗くなっていたこの時間でもまだ明るい。北風の中、実は日差しは強くなっていて、また周期的に降る冷たい雨が春を呼ぶこの2月後半は、季節の歩みを実感できるので一年で最も好きな時期。着実に進む季節のように、業界全体も、自分自身も、成長を重ねることができるか。新しい季節は、すぐそこまで来ているはずだ。





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Last updated  2012.02.26 16:51:19
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「高速バス停留所調整ガイドライン」   551planning さん
東京交通新聞短信で出ていました。今春から2年内移行ということで、まさに焦点はバス停。ガイドラインの中身も気になりますが、嘗て公取委を巻き込んだ富士交通の一件からしても話は単純ではなさそうで…。
そのあたりも絡みそうな某社「格安バス」ネタを当方サイトにて繰ってみましたが、御意見を拝聴できれば幸いです。あ、あくまで市井の一マニアとしての戯言ですので念のため…。
http://snow.advenbbs.net/bbs/planning.htm (2012.02.27 08:22:18)

Re:「高速バス停留所調整ガイドライン」(02/26)   nalys さん
551planningさん、コメントありがとうございます。

ただいま出張中で某社高速バス車内ですので簡潔に。『東京交通新聞』はハイパーニュースに加え本日付の本紙でも取り上げられましたので、本日付の本ブログに記事を上げました。たしかにバス停の問題はポイントで…今回は公取委なんて話にならないように、関係各位は想像力を事前に働かせていただきたく…

貴サイトの記事についてはまたゆっくり拝見しますね。またコメントをお待ちしています。 (2012.02.27 15:39:39)

Re:「高速バス停留所調整ガイドライン」(02/26)   nalys さん
551planningさん、「常設版」にコメントしました。 http://snow.advenbbs.net/bbs/planning.htm
  いやあ、私には答えづらい内容でした(苦笑)。 (2012.02.28 09:56:02)

Re[1]:「高速バス停留所調整ガイドライン」(02/26)   551planning さん
いやいや、狙って振り込んでみましたが失礼しました。
ともあれ新高速制度、いよいよ目前ということで、今後の業界全体の動向も気がかりですし、当方としてはイチ利用者目線で生暖かく見守らせて頂きますので更なる情報発信のほど、よろしくお願い致します! (2012.02.28 17:57:13)

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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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