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長押 綴

長押 綴

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2011.03.26
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カテゴリ:🌾7種2次裏
パターン3粗筋:安居+卯浪+夏B



百舌はどう見ても壊れている安居の未来を危惧していた。

だからこそ進言した。

「チームに2人ずつ、夏Aを入れようと思います」


そうして今の状況がある。





百舌は後悔していた。

安居は卯浪と、身内以外の人間に対して嫌悪と警戒を露わにしている。特に蝉丸相手の場合は最悪だった。
起きたばかりで間もなく、自分のエゴを剥き出しにしている彼らはことあるごとに衝突していた。特にナツを茂のように守ろうとする安居と、弄ろうとする蝉丸の相性は最悪で、そのたびに嵐が止めに入るものの空気はぎすぎすするばかりだった。

 常に見張りを勝手に買って出る為安居の目の下は隈だらけ、顔色も悪く、目だけが爛々としている。恐らく他の夏Aが誰か一緒ならばこうはならなかっただろう。

「どうすればいいんだ…」

 頑張ることに疑問を覚えない『エリート』の安居と、頑張ることに疲れた結果『社会不適合者』になった人々。噛み合うはずもない。

「教えてよ…茂……
 要先輩……」

自分の正体を明かすかどうか、百舌はまだ決めかねている。





百舌は見直していた。

卯浪の横暴に茶々を入れている内、蝉丸と卯浪と安居とである種のバランスが取れてきたのだ。
安居が卯浪に対し殺意を止められない時は蝉丸が間に入り、蝉丸と卯浪の目的や手段が噛み合わない場合、あるいは妙な方向に話が動き出した場合は安居が止めに入り、蝉丸と安居がナツのことで言い争いになった時は卯浪が共通の敵となった。

体力も、支配することへの慣れもある卯浪を止める者が居ない場合は、百舌が少し手助けをしてきたものの、数週間経ってこれなら大丈夫かもしれないと思うことができた。

山のように問題があったとしても、頑張る気概と挑む手段があるならば、乗り越えられる。





百舌ははらはらしていた。

嵐、ナツ、そしてその後から追いかけた蝉丸、卯浪と、更にその後から追いかけた安居の合流がその少し遠くでかかげられた双眼鏡によって、百舌の目に捉えられる。

案の定彼らはかなり相性が悪いようで、百舌はやはり別の面々が行った方がよかったのではないかと頭を抱えた。


出発直前の安居に言われた言葉が、百舌の頭を過った。

『大丈夫ですよ』

『先輩』

『頑張りますから』

本当に大丈夫なら、いいのだが。









安居は五感を尖らせていた。

余所者を複数人入れる訳にはいかない、何をされるか分からない。それが秋のチームの蘭と秋ヲの言い分だった。

秋の村に5人同時に入れてもらえるとは思っていなかったが、よりにもよって一番体力的に心配なナツが連れていかれるとは。安居は眼光を強める。

そんな折。
十六夜と名乗る秋のガイドと卯浪が話している隙に、蝉丸が耳打ちを始めてきた。

「美女とおっさんとナッちゃんが楽しい事してんの見に行こうぜ」
「馬鹿、何言ってんだお前」
「……」

少なくともナツにとっては確実に楽しくないだろう。
それでも、招かれるまま、少しでも情報を得る為に踏み入っていったナツの様子が、あの冬の夜の茂と重なる。
安居は口を開く。

「……遠くから見るくらいなら」
「ししょーったらムッツリスケベ―」
「…相手が敵だろうと味方だろうと、偵察は大事だ。……秋がナツに対し味方を装って、動けない状態にして、人質にするということもありうる。その時の為に、村の大体の形や、ナツ達の入っていく場所くらいは把握しておいていいだろう。
 ……そうそう、それと、先ほど『村には居ない』と言われた小瑠璃と源五郎が本当に居ないのかも確認しておきたい」

 未来に来る前にうっすらと聞いていた、別のチームと一緒に目覚めさせられるという話。

 それを、安居は未来にやってきてからやっとまともに頭に残すことが出来た。憎んでも憎み足りない卯浪を、状況把握の為だけに安居は殺す事ができなかった。

 卯浪を殺すと叫んでいた小瑠璃も、もし夏Bに配属されていたらきっと同じような状態だっただろうと安居はぼんやり考えていた。そうならなくてよかったとも。
 夏Bに自分がいま居る意味を、だからこそ出来ることを、安居は考え、そして口を開く。

「……蝉丸」
「ん?」
「お前なら多分出来る」
「……だから何を?」
「卯浪を見張っててくれないか」
「……えっ、ヤダ!!俺一人であのおっさん扱うとか無理」
「虫を食材に加えるのとどっちがいい」
「分かったよ、分かりましたよ」

 『居ない』ということは、『別行動をしているから居ない』『何かトラブルがあって引き離されたから居ない』『死んでいるから居ない』の可能性があり得る。

 もし小瑠璃と源五郎が別行動をしていた場合、卯浪と遭遇したら、それこそとても辛い思いをするだろう。

「で、目的は何だってんだよ」
「…もし、あいつらが居ないって言った小瑠璃と源五郎の気配とか声が聞こえたら、卯浪を別の所に引っ張ってくとか、そこの納屋になんか理由付けて閉じ込めるとかして、絶対に会わせないでほしい」

 何せ卯浪は銃を持っている。そして教師の例に漏れず、生徒を支配する為ならば何でもするだろう。

「……いやいや、無理無理。それこそししょーがやればいいじゃん」
「俺は嘘が苦手だから無理だ」
「俺だってそんなん無理だっつーの」
「繁華街でやばい奴らを見てきたんだろう?やばい奴の扱いはうまいんじゃないのか」
「見れば分かるだろ?俺は小物だって。そんな奴ら相手にしたら逃げるの一手してたに決まってんじゃん」
「じゃあ卯浪を連れてどこかに逃げろ」
「全然ときめかねえ逃避行だな!つーか2人で見知らぬ土地で逃げるとかして、また変な動物とか植物とか虫に遭ったらどうすんだよ!」
「何かあったら卯浪を囮にしろ」
「本当にお前あいつ嫌いだよな!」
「ああ。……俺だけじゃない。夏Aは皆、あいつが未来に来てるとは思ってないだろう」

安居はそう言って、嵐とともに歩き出した。

「お…おい!安居!」
「頼む、蝉丸。……行くぞ、嵐」
「…あ、ああ」


かくして、物語は奇妙な方向に転がり始める。


*******






→次回、トリックスター★卯浪と7人分の殺意 (続かない)


*pattern3-春+虹子・涼/夏B+安居・卯浪/秋+源五郎・小瑠璃/冬+あゆ・鷭
でした。





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最終更新日  2018.02.23 18:15:06
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