集団的自衛権の行使容認が今回の安全保障関連法案をめぐる議論の中で焦点になっています。なぜ集団的自衛権の行使を容認する必要があるのでしょうか。与党協議では集団的自衛権の行使の事例として以下が挙げられています。
- 邦人輸送中のアメリカ輸送艦の防護
- 武力攻撃を受けている米艦防護 ●安保法制懇2008
- 周辺事態等における強制的な船舶検査 ●安保法制懇2014
- 米国に向け日本上空を横切る弾道ミサイル迎撃 ●安保法制懇2008
- 弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護
- アメリカ本土が武力攻撃を受け、日本周辺で作戦を行う米艦防護 ●安保法制懇2014
- 国際的な機雷掃海活動への参加 ●安保法制懇2014
- 民間船舶の国際共同護衛
安保法制懇2008報告書
安保法制懇2014報告書
1. 邦人輸送中のアメリカ輸送艦の防護
なぜ、自衛隊の艦船自体で輸送しないのでしょうか?自衛隊の艦船が行けるのであったら日本の輸送船も一緒に行けるのではないでしょうか?世界的に艦艇を展開している米国の方が先に防護に向かえるのが普通でしょう。
米国の艦船が優先的に乗せるのは米国人です。米国が輸送艦を出す場合防護が必要なら自分で護衛艦を出すのが普通です。
2. 武力攻撃を受けている米艦防護
共同訓練等で公海上において、我が国自衛隊の艦船が米軍の艦船と近くで行動している場合に、米軍の艦船が攻撃されても我が国自衛隊の艦船は何もできないという状況が生じてもよいのかというのが提示された問題意識です。
並走する米艦艇への攻撃は同時に自衛艦への攻撃とみなして個別的自衛権での反撃が可能だとする意見があります。
この意見に対しては「自衛艦が攻撃されていないにもかかわらず個別的自衛権の行使として米艦を防護した場合には、国際連合憲章第51条に基づき我が国がとった措置につき国連安全保障理事会に報告する義務が生じるが、 「我が国に対して武力攻撃が発生した」という事実がないにもかかわらず個別的自衛権の行使として報告すれば、国際連合憲章違反との批判を受けるおそれがある」という反論があります。
しかし、国際連合憲章第51条は「国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」となっており集団的自衛権でさえ認める姿勢からしてもそのような批判を受けることはまずないと考えられます。
そもそも、公海上で日米合同訓練中に米艦を妨害ならともかく攻撃という想定はどうなのでしょう。
3. 周辺事態等における強制的な船舶検査
具体的には北朝鮮のことを想定しているように見えますが、北朝鮮に限らず陸路を封鎖しない限り海上封鎖をやってもほとんど効果がありません。
4. 米国に向け日本上空を横切る弾道ミサイル迎撃
多数発射されたミサイルを迎撃する技術的困難がまず存在します。また米本土を攻撃するような場合は同時に日本、グアムなどの基地も同時に攻撃すると考えられるので日本が優先して対処すべきなのは国内の基地の防衛ということになります。
5. 弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護
これも必要があれば米軍が護衛艦を出します。
6. アメリカ本土が武力攻撃を受け、日本周辺で作戦を行う米艦防護
普通なら日本有事のケース。この場合は、個別的自衛権で日本の防衛のために活動する米艦防護が可能。
7. 国際的な機雷掃海活動への参加
停戦署名がなされ安全が確保される前に機雷掃海する必要があるのか疑問です。備蓄、輸入元の多角化を進めるのが先決であると思います。
8. 民間船舶の国際共同護衛
具体的にどのようなケースか不明です。
当然集団的自衛権を認めてしまえば障害はなくなります。しかし、これまで集団的自衛権の行使を認めてこなかったのは自国が攻撃されたときのみ必要最低限の武力行使を行うことを明確な歯止めとしてきたからです。今、国際情勢の変化を理由としてその歯止めを外そうとしています。
歯止めをなくさなければ対処できないとして挙げられたのが上記事例です。なぜか不自然で、無理やり考え出した感じが否めません。そうなってしまう原因は安倍首相がたんに「集団的自衛権を認めたいからそうする」ということだからでしょう。
どうして安倍首相は憲法解釈を変更してまで集団的自衛権にこだわるのか?一つは憲法に先立って現状を変更し、現状と齟齬が出ていますという論理で憲法改正を狙っているのでしょう。もう一つは米軍とより一体化しろという米国の指示(アーミテージ、ナイリポート)に従ったことをに明確に示したいということでしょう。
憲法解釈の変更による集団的自衛権の容認に関する意見書
(元防衛庁教育訓練局長 新潟県加茂市長 小池清彦)
政府の 15 事例に関する見解(民主党)
集団的自衛権の行使容認(MEDIA WATCH JAPAN)
安倍首相派の子供だまし大ウソの集団的自衛権行使論は一刻も早く退場させるべき!(愛国者の邪論)