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カテゴリ:科学本
「現代物理学の世界 ーフロンティアを拓いた人びと」久保謙一(岩波ジュニア新書)
若者向けの簡単な入門書。タイトルにあるように人物に焦点をあてての切り口が面白いかも。高校時代に現代物理をあまり真面目にやらなかった影響で、核物理とかとても苦手なんでちょうどよかった。 P61 チャドウィックの実験結果、すなわちビスマスがポロニウムと電子に崩壊する&beta崩壊では電子の運動エネルギーが一定にならない。エネルギーは保存しない??とボーアは考えた。量子力学の世界では変なことが起こりまくっていたのでそれもありなんじゃないのという訳だ。弟子であったパウリは異論を唱え、ニュートリノの存在を仮定し、電子とニュートリノの運動エネルギーを足したものは一定になるとあくまでもエネルギー保存則にこだわったのだ。 P69 &beta崩壊、つまり現在では「弱い相互作用」と呼ばれる相互作用のために核内で中性子が陽子と電子に別れる現象、におけるその他の問題(スピン非保存、レプトン数非保存)もニュートリノで解決。バリオン数とかレプトン数とか・・・う~ん、既に敷居が高い・・・。 P79 ニュートリノの実在が確認されすべては解決したかに見えたが、リーとヤンの理論、ウーの実験によって弱い相互作用でパリティーが保存しないことが示された。ここに来てパウリはボーアが予言した「保存則の破れ」が実際に生じることを知った。まず乗り越え、そして最後に敬意を表する。なかなか良い関係性ではないか! P120 「電力発光」のところが面白い。白熱灯、タングステン線に流れる電流によって電気抵抗にジュール熱が発生、それによってタングステン原子が不規則な熱振動を行い、その結果熱放射が起こる。熱放射は&lambda (nm) = hc/E = 1.24 x 10^3 (eV)で表される。タングステンの不規則な熱振動が幅広いエネルギーを放射するので白色光になる。小難しいことを考えなくても白熱灯を見るだけで量子力学のことに思いを馳せることができるんだな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年10月12日 13時13分50秒
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