カテゴリ:本の感想(さ行の作家)
~文藝春秋、2019年~
吉敷竹史シリーズ最新刊。吉敷さんが登場するのは『龍臥亭幻想』以来ですね。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。
――― 東京大学の博物館で、吉敷は通子と交流のある画家・鷹科艶子の作品に衝撃を受ける。歌舞伎役者のような美形の男が、剣を上下に振り下ろす瞬間が描かれていた。印象的なのは、男が赤子を背負っていることだった。 娘のゆき子とともに、作者の艶子と話す機会を得た吉敷は、彼女の絵が、実際に彼女が見た光景を描いていると聞く。戦後直後、昭和20年9月、艶子が10歳の頃、彼女が住んでいた盲剣楼に、悪人らが乗り込み、建物を封鎖し、何日も女性たちに乱暴をはたらくという事件が起こった。悪夢のような日々に終止符を打ったのが、どこからか現れた美形の男で、男は一瞬のうちに5人の悪人を斬り殺したという。 その夜、艶子と待ち合わせをしていた吉敷とゆき子だが、艶子は現れない。通子からの連絡で、艶子の孫が誘拐されたことが知らされる。誘拐犯は、昭和20年の事件の犯人への復讐を望んでいるというのだが…。 * 戦国の時代が終わり、徳川の時代が始まっていた。 加賀の紅葉村で、百姓たちは穏やかに暮らしていた。しかし、その土地の良さに目を付け、西河屋のごろつきどもは村人たちを追い払おうとする。人々が苦しめられている中、圧倒的な強さを持つ剣士、山縣鮎之進が現れる。 ―――
物語の大半は、鮎之進さんの物語です。昭和20年の事件の核となる、盲剣さまの伝説を詳細に描いた物語ですが、これが面白かったです。ふだん歴史小説や時代ものはほとんど読みませんが、これは夢中になって読みました。 密室状況の中で、悪人たちを一瞬に倒した、まるで盲剣さまのような人物は誰だったのか。密室の謎は。といった謎解き要素もありますが、丹念に描かれた鮎之進さんの物語が、全てをつなぐとともに、物語にぐっと深みを与えてくれています。 ゆき子さんももう大学生になっています。なんとも感慨深いです。
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大変ご無沙汰しております。
コメントありがとうございます。 久々の吉敷シリーズです。記事のとおり、大半は鮎之進さんの物語ということで、吉敷さんの出番はやや少ないですが、その活躍も素敵です。 (2019.10.21 21:44:08) |
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