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意外な戦史を語る~  カモメとウツボのメクルメク戦史対談

意外な戦史を語る~ カモメとウツボのメクルメク戦史対談

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2009.05.01
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(カモメ)藤田信雄飛曹長は、軍令部第三課に出頭することになりましたね。

(ウツボ)そうだね。田上艦長は藤田信雄飛曹長に「これから直ぐ行ってくれ。多分部員の井浦祥二郎中佐だろうが、俺もよく知っている。井浦に会えば分かるだろう」と言った。

(カモメ)藤田飛曹長は新橋駅で下車し、海軍省の古風でものものしい建物の前に立って、行き来する人を見て一瞬、ためらったと記してあります。

(ウツボ)それはね、その行き来する人々は、中佐、大佐、少将と偉い人ばかりで、藤田のような飛曹長など一人もいなかった。それで、なんとなく気おくれして、ためらったが、思い切って、中に入っていき、二階の軍令部第三課に行った。

(カモメ)ノックして中に入ると、中央に背広を着た立派な紳士がいたのです。テーブルの上に「部長」と書いた木の札がありました。おそらく少将くらいの人だろうと藤田飛曹長は思ったそうです。

(ウツボ)そうだね。右のテーブルに中佐の人がいたので、「伊号二五潜水艦の掌飛行長まいりました!」と報告すると、「おうご苦労、こちらにきてくれ」と隣の部屋に案内された。その中佐は誰かを呼びに部屋を出て行った。

(カモメ)しばらくすると、見るからに武人らしい風貌のたくましい中佐が入って来た。「おう、ご苦労、井浦部員だ。田上艦長は元気か」と言いました。

(ウツボ)そのあと、駐在武官としてシアトルにいたことのある副官という人がチャートを四、五枚持ってきて、広げた。井浦中佐は「アメリカ爆撃をやってもらう。目標は山林だ。副官はシアトルにいたから、今から詳しい説明をする」と言った。

(カモメ)藤田飛曹長はアメリカ爆撃と聞いて、心が躍ったが、山林爆撃と聞いて、「なんと馬鹿馬鹿しい事をやるんだ。大飛行機工場などをあればいいじゃないか」と思ったそうです。

(ウツボ)だが、やがて最初の中佐も加わり、さらに参謀肩章を吊った海軍中佐・高松宮殿下も、来られて、説明が始まった。その内容は次の通りだった。

(カモメ)読んでみます。「米国西海岸は山林が多く、しかもほとんど原始林で、一番恐れているのは山火事。一度山火事が起こると消火のしようがなく、熱い熱風が付近の町を襲う。すると住民は命からがら避難しなければならない」

(ウツボ)次を読むよ。「生命をさらす危険に追われながら逃げることは戦争以上の苦しみだ。しかも消火の手のほどこしようもなく、何週間も燃え続けることもある。とくにシアトルの入り口の三角州は山林で、都市が近くまで迫っている。州政府はこの上空を飛行禁止にしている。もし飛行機事故で火災でも起きたら大変なことになるから」

(カモメ)続けて読みます。「だから、この森林地帯を、飛行機から焼夷弾投下によって森林火災を発生させれば、その効果は絶大である。また日本の飛行機がアメリカ本土まで飛んでくるということは、敵国の志気を喪失させる効果もある」

(ウツボ)藤田飛曹長はこの説明を聞いて「よ~し、やるぞ」と思ったんだ。これに成功すれば、日本陸海軍、および国民の士気を鼓舞することは間違いないと思った。

(カモメ)藤田飛曹長が帰艦した後、伊二五潜水艦は横須賀軍港を出港しました。常備排水量二五八四トンといえばかなり大きい潜水艦ですね。航海中、藤田飛曹長は、田辺航海長、田上艦長、先任将校・福本大尉、星軍医長らと士官室の大きいテーブルを囲んでよくブリッジをしたそうです。

(ウツボ)十数日の航海の後、伊二五は北米西岸六百海里に到達した。九月に入った西海岸は荒れ模様で、波が高く、発進の機会はなかなか得られなかった。

(カモメ)藤田飛曹長が士官室で拳銃の手入れをしていると、田上艦長に呼ばれました。司令塔にいた田上艦長は潜望鏡を見せてくれたのです。

(ウツボ)潜望鏡からは、はるかにアメリカの山々が見えた。ブランコ岬の灯台も高くそびえていた。白い海岸線も見えた。田上艦長に礼を言うと、田上艦長は「体のぐあいはよいか」と気遣ってくれた。「はい、いたって上々です」と答えた藤田飛曹長は、発進が近いのを感じた。

(カモメ)今回は決死の飛行ですね。敵に発見されれば、敵戦闘機が出てくる。たとえそれを振り切っても、洋上の豆粒ほどの母艦の潜水艦を見つけるのは難しい。

(ウツボ)そうだね。だが、もちろん、会合地点が決められており、それは第一揚収地点、第二揚収地点、第三揚収地点が指定されていた。第一で揚収不可能の場合は第二で、第二で不可能ならば第三でと打ち合わせがされていた。

(カモメ)第三地点で母艦が来ない時は、すなわち、母艦がやられたときなのですね。その時は、着水して、まず暗号書を沈め、次に飛行機を海没させるために破壊する。最後は拳銃で奥田兵曹とともに自決することになっていたそうです。

(ウツボ)昭和十七年九月九日夜明け前、天候も良くなり、ついに、藤田飛曹長と奥田飛兵曹は零式小型水偵でカタパルト発進をした。高度三千メートル、速度百ノットでオレゴン州のブランコ岬に進入した。

(カモメ)森林地帯に入り、焼夷弾を投下しました。下を見るとパッと閃光がはしり、花火のように散った。続いてもう一発も投下した。下の森林が燃え上がった。大成功だったのです。

(ウツボ)帰りは逃げるように、機種を下げて、速度百三十ノットまで加速した。下に民家があったので、エンジンの回転を絞って、どんどん機を降下させた。

(カモメ)下を一万トンクラスの商船が二隻通っていたのを視認しました。その二隻の間を通過して、やがて会合地点に来た。すると母艦の伊二五が浮いているのが見えた。すぐに発見できたのです。









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最終更新日  2015.08.15 09:24:08


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