テーマ:意外な戦記を語る(748)
カテゴリ:潜水空母・伊401
(カモメ)南部少佐は佐世保工廠に行き、艤装中の伊四〇一と対面しました。見ると、その大きさが実感され、度肝を抜かれました。
(ウツボ)それは、大型潜水艦を二隻横に並べ、その上に小型潜水艦を一隻積んだような巨大さだったからね。びっくりするよね。 (カモメ)日本帝国海軍は、これまでの潜水艦の概念から飛び離れた、怪物潜水艦を作り出したのですね。 (ウツボ)そういうことだね。南部少佐は伊四〇一の感想を聞かれて「私はずいぶん長い間、潜水艦に乗ってきたけど、あんな大きな艦を見たのは初めてでしたね。なにしろ、今までの潜水艦は前から後ろに一本の通路を通るだけだったけど、今度の艦は横にハッチがついていて、隣の部屋に行けるようになっていたのには、びっくりしました」と答えている。 (カモメ)さらに「あの艦は、普通の潜水艦を二つ並べて、その前後にもう一隻ずつくっつけたような具合でしたね。その上に飛行機を収納する巨大な筒が乗っかっている。その筒だけでも二二〇トンもあるのです」とも述べていますね。 (ウツボ)「日本の潜水艦パーフェクトガイド」(学習研究社)によると、この巨大潜水艦に必要とされる艦内容積を得るだけの大型の内殻を単一構造で造るのは不可能だった。 (カモメ)それで内殻の形状は「海大一型」以来の多筒式船殻とされたのですね。船体中央部の内殻は眼鏡型断面として必要な艦内容積を稼ぎました。また、潜航時の横傾斜を防ぐことをねらった構造にもなっています。 (ウツボ)伊四〇〇型は、特殊攻撃機「晴嵐(せいらん)」三機を搭載した潜水空母で、もちろん当時世界最大の潜水艦だった。昭和三十五年に米国のミサイル原子力潜水艦イーサンアレン級が就航するまで、世界最大の潜水艦のタイトルを維持した。 (カモメ)伊四〇〇型の水上常備標準排水量は五二二三トン、水中排水量六五六〇トンですね。五二二三トンは駆逐艦以上の大きさで、巡洋艦並みですね。 (ウツボ)まさに巡洋艦だね。そのほかのデータは全長一二二メートル、全幅一二・〇メートル。水上七七〇〇馬力(ディーゼルエンジン四基、一九二五馬力×四)水中二四〇〇馬力(電動モーター二基、一二〇〇馬力×二)。二軸。速力は水上一八・七ノット、水中六・五ノット。航続距離は水上一四ノットで三七五〇〇海里、水中三ノットで六〇海里。燃料は重油一七五〇トン。乗員一五七名(士官は約二〇名)。なお、二二号電探一基、一三号電探一基を搭載していた。 (カモメ)連続行動期間は約四ヶ月ですね。三七五〇〇海里は、理論上は地球を一周半まわれる長大な航続距離ですね。フランスの小説家、ジュール・ベルヌの海洋空想小説「海底二万海里」の約二倍の距離です。日本帝国海軍はノーチラス号以上の壮大な潜水艦を作り上げました。俺はそこにロマンを感じました。 (ウツボ)「海底二万海里」はビデオで映画を観ましたが、海底旅行の興味深い映像を含めて、意外なストーリーは観どころがある。ネモ船長の人間性も、現代の船長や艦長からみて批判的な面もあるだろうが、全体のストーリー展開から見れば理解できる。 (カモメ)俺は「海底二万海里」は観ていないですけど、一度観てみたいですね。ところで、伊四〇〇型の武装は四〇口径一四センチ単装砲一門、二五ミリ三連装機銃三基、同単装機銃1基、五三センチ魚雷発射管艦首八門、魚雷二〇門ですね。 (ウツボ)四〇口径一四センチ単装砲は、日本の潜水艦用としては最も大きい砲で、単装と連装があった。俯仰角+三〇度、-五度。弾丸重量三八キロ、初速七〇〇メートル/秒。最大射程は仰角三〇度で一五三六五メートルだ。 (カモメ)潜水空母・伊四〇〇型は搭載機晴嵐を発信させるカタパルト(四式一号一〇型射出機)を前甲板に一基設置していましたが、船体中心線より約一五インチ右舷に寄っています。 (ウツボ)この射出機圧縮空気動力だが、火薬動力の一式二号射出機と同等の射出性能があった。全長は二六メートル。このカタパルトはもともと、艦上爆撃機「彗星」、艦上攻撃機「天山」を発進させることを目的に開発された。 (カモメ)伊四〇〇型の格納筒や、扉、上部構造物には、モルタル様のステルス塗料(防探塗料)が塗られていました。ステルス塗料は、ソナーの超音波とレーダーの電磁波を吸収・乱反射させる為に日本海軍が開発しました。 (ウツボ)実際に完成したのは超音波吸収塗料だけだったが、この時点で、すでにステルス性能に着目、開発した、日本海軍の技術力と先見性は、見事なものだった。 (カモメ)確かにそうですね。特殊攻撃機「晴嵐」三機を格納する甲板上の構造物、格納筒は、直径三・五メートル、長さ三〇・五メートルですね。 (ウツボ)晴嵐はフロートをはずし、主翼・尾翼を折りたたんで格納した。急速発進を実現するため、格納筒の中の晴嵐は、すでに爆弾または魚雷を懸吊し滑走台車に載せてあった。 (カモメ)前甲板の格納筒の扉の形状は波切りをよくするため三角状の鋭い形になっていました。晴嵐を出す時に開閉する扉は、水密扉で、油圧で開閉し、ロックは手動で行いました。 (ウツボ)敵のレーダー波を探知する電波探知機(逆探)のアンテナも設置されていた。また、方向探知機アンテナ、ホーン型アンテナ(対水上用)、八木式アンテナ(対空用)などを装備していた。 (カモメ)アンテナの基台にも、各種ゴム、特殊セメント、石綿粉等々を調合したステルス塗料が塗られていましたね。 (ウツボ)たいしたものだね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.08.15 09:21:40
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